【ニューヨーク=竹内弘文】バイデン米大統領が大統領選からの撤退を表明して一夜明けた22日の米株式市場は、前週の相場を動かしたトランプ前大統領の再選を織り込む「トランプ・トレード」の揺り戻しが見られた。半導体などの銘柄に買い戻しが入り、主要な株価指数は反発した。混沌とする政治情勢が株価に与える影響について市場参加者は吟味を続ける。

ダウ工業株30種平均は前週末比127ドル(0.3%)高の4万0415ドルで引け、多くの機関投資家が参照するS&P500種株価指数も1.1%高だった。上昇が目立ったのがハイテク株の比率高いナスダック総合株価指数で、1.6%高で引けた。

半導体最大手エヌビディアが5%高となり半導体関連銘柄が軒並み大幅高となったほか、マイクロソフトが1%高になるなどIT(情報技術)大手も底堅かった。時価総額が大きく指数への影響度の大きい巨大テック銘柄は、トランプ氏が米ブルームバーグのインタビューで台湾における半導体産業集積を批判したことなどをきっかけに急落していた。

対照的に、石油採掘の規制緩和をとなえるトランプ氏の再選期待を背景に株価が上昇傾向にあった石油・エネルギー大手は、22日は一転してさえなかった。エクソンモービルやシェブロンはともに1%安となった。

高齢問題にスポットライトがあたり支持率が低下していたバイデン氏が選挙戦から撤退したことで「大統領・連邦議会上下両院を共和党が牛耳る『レッドスイープ』の実現可能性は低下した」。米シティグループでクオンツ・グローバル・マクロ戦略を担当するアレックス・ソンダース氏は指摘する。

トランプ氏が当選したとしても、民主党が上下院のどちらかでも多数派となれば、党派色の強い政策はハードルが高まる。トランプ氏再選を当て込み、影響を受けそうな銘柄を先んじて売買した動きは一部巻き戻しを余儀なくされた。

もっとも、大統領選を巡る状況はなお流動的で、トランプ・トレードの対象となった銘柄の値動きからは気迷いも透ける。米国製造業の復活を掲げるトランプ氏がインタビューで挙げた建機大手キャタピラーは、22日朝方に株価が一時前週末比1%あまり下落したものの、結局小幅高で取引を終えた。

バイデン氏が後継候補として支持を表明したハリス副大統領は民主党内での支持を固めつつあるが、党内の候補者選定のプロセスはこれからだ。米ジョーンズトレーディングのマイク・オルーク氏は「世論調査でハリス氏の人気を確認するまで、投資家は確信を持って持ち高を傾けにくい」とみていた。

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