27日の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会で、韓国は新潟県の「佐渡島の金山」の登録に同意した。戦時中に朝鮮半島出身者が働かされた歴史の扱いを巡り、日韓の交渉が直前まで続いたのは、当時の状況が国際法違反の「強制労働」に当たるか否かで両政府の見解が異なるからだ。日韓関係を重視する尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、労働の強制性をうかがい知れる歴史資料の展示などで折り合い、合意にこぎ着けた。(ソウル・木下大資)

◆見解の相違を友好的に解決する意欲示した

 インドで開かれた世界遺産委員会で、ユネスコ日本代表部の加納雄大大使は佐渡金山の展示に関して「韓国と緊密に対話してきた」と強調。「韓国との見解の相違を友好的に解決する意欲」を示すため、すでに現地施設に新たな展示物を整えたと表明した。  展示される資料は、朝鮮人が特に危険な坑内作業に従事したことや、寮生活から逃げ出す人がいたことなど、過酷な労働環境をうかがわせる記録を含む。

史跡佐渡金山の内部。採掘作業の様子が人形展示されている

 「私たちが労働の強制性が読み取れると考える資料が含まれている」。韓恵仁(ハンヘイン)・アジア平和と歴史研究所研究委員は、日本の対応が予想以上に踏み込んだと驚く。初期の動員から朝鮮総督府が関与して実施されたと日本政府が言及した点にも注目し、「資料の解説の仕方によっては韓国内で反発が出るかもしれないが、事実関係は隠されていない」と評価した。  日本政府は、戦時動員が国際労働機関(ILO)条約の禁じる強制労働には当たらないとの立場を取る。外務省は「朝鮮半島出身の労働者について日本の立場は変わっていない」と説明する一方、「展示の解釈は控える」と述べた。  日韓双方の解釈の余地を残すことで妥協した形。韓国外務省の当局者は「お互いが違うように説明するときりがない。(加納氏の発言を)文字通りに見て判断しようというのが、韓日合意の精神だ」と明かす。  「『手形』ではなく『現金』が必要だった」。韓国の外交関係者は、日本側に具体的な措置を求めた一連の交渉をそう表現した。

◆長崎・軍艦島の登録時にこじれた感情

 念頭にあったのは、同様に戦時動員があった長崎県の端島(通称・軍艦島)を含む「明治日本の産業革命遺産」が、世界文化遺産に登録された2015年の経験だ。日本は「意思に反して連れてこられ、厳しい環境で働かされた多くの朝鮮半島出身者らがいた」と認め、「犠牲者を記憶にとどめるために適切な対応を取る」と表明。ところが東京の展示施設で、朝鮮半島出身者への差別はなかったとする元島民の証言を紹介し、韓国では「日本は約束を履行しなかった」との反発が広がった。  峨山(アサン)政策研究院の崔恩美(チェウンミ)研究委員は、今回の日本の対応を「15年の教訓を踏まえ、記録の展示や追悼行事の実施という『実践』に重点を置いた。日韓関係を良好に保つという首脳間のコンセンサスの下で、外交当局が相当に努力した結果だと思う」と評価した。 

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