ASEAN関連の外相会議に出席した上川外相(右から2人目)は「法の支配」を基に中国を批判した(27日、ビエンチャン)=ロイター

南シナ海で不測の事態をどう防ぐか。27日までラオスで開いた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議は、米国と中国の間で応酬が続き、緊張緩和への道筋は見通せなかった。

中国が法的な正当性を欠いたまま、強引な海洋進出をやめないことに原因がある。圧力に直接対峙するフィリピンを支援しながら、日本は米国などとの多国間協調で対中抑止を図る必要がある。

3日間開いた一連の外相会議では、米国が中国の威圧行為を非難し、中国は米国の介入が事態を悪化させていると反論した。最終日の会合で、上川陽子外相は「国連海洋法条約に基づかない不当な権益の主張や活動は認められない」と中国をけん制した。

中国は南シナ海全域が自らの主権内だと主張し、埋め立てや軍事施設の建設を加速する。フィリピンの提訴を受け、2016年に国際的な仲裁裁判所が「中国の主張に法的根拠はない」と断じたにもかかわらず、無視を決め込む。

最近はフィリピン軍が座礁船を拠点に実効支配するアユンギン礁への補給活動を妨害し、比軍兵士が指を切断する事件も起きた。

本格的な衝突へ発展するのを回避すべく、両国は補給活動での取り決めに合意した。比軍の補給再開を中国は容認したものの、事前通知や作業中の監視を巡る両国の説明は食い違っており、緊張が再燃する恐れは否定できない。

中比外相は対話で解決策を探る姿勢で一致した。だが中国の過去の行状をみれば楽観はできない。力による現状変更の試みに対し、力の抑止力は不可欠といえる。

日米比は4月にワシントンで初めて3カ国首脳会談を開き、米比海軍の共同訓練に海上自衛隊が参画することに合意した。5月にはオーストラリアを加えた4カ国の合同演習強化を申し合わせた。

南シナ海での訓練に参画しやすくするため、日比は今月上旬に部隊間の相互往来をしやすくする「円滑化協定」に署名し、安全保障協力を準同盟級に引き上げた。

11月に大統領選を控える米国は内政に目が向く時期だ。中国は過去にも「力の空白」をつき、南シナ海で実効支配を強めてきた。同盟国である日本は、多国間協調を通じて米国の負担を軽減したい。

ロシアのウクライナ侵略やガザ戦争など相次ぐ紛争を、世界経済の重要な海上交通路である南シナ海に持ち込んではならない。

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