イラン新大統領の宣誓式に出席したハマスのハニヤ最高指導者(30日、テヘラン)=WANA提供・ロイター

イスラム組織ハマスのハニヤ最高指導者が、訪問先のイランで暗殺された。ハマスはイスラエルの攻撃と主張した。中東の混迷に拍車をかける恐れが強い。すべての当事者に最大限の自制を求める。

ハマスは怒り、イスラエルへの報復を宣言した。昨年からイスラエルと交戦が続くパレスチナ自治区ガザ情勢に影響が及ぶのは必至だ。米国などが仲介するガザ停戦交渉は、決着がますます遠のく。

ハニヤ氏はイランのペゼシュキアン新大統領の宣誓式に出席するため首都テヘランを訪れていた。イランはイスラエルと敵対し、ハマスを支援している。

お膝元で暗殺を許したイランは面目を失った。ハニヤ氏が拠点とするカタールではなく、イランが殺害の場として意図的に選ばれた。イランの最高指導者ハメネイ師は、イスラエルに報復する考えを示した。

イスラエルとはかろうじて全面衝突を避けてきたが、イランが踏み込んだ報復行為をとれば中東全体が流動化する。さらなる混乱を防がなければならない。

レバノンのヒズボラやイエメンのフーシといった中東各地の親イラン武装組織とイスラエルの衝突も激しさを増している。いずれの組織も、後ろ盾はイランだとイスラエルは批判している。

それぞれがイスラエルを攻撃するような挙に出れば、同国は本格的な多正面の戦争に陥る危険がある。偶発的な衝突や互いの意図の読み違えが増え、制御不能の戦禍を招く恐れが強い。

イスラエルはヒズボラ幹部を狙いレバノンを攻撃したばかりだ。占領地ゴラン高原へのロケット弾攻撃への報復としたが、攻撃の規模は限定的だった。米欧による自制の呼び掛けに一定の効果があった可能性がある。

同じように、国際社会は今回も抑制的な対応を粘り強く働きかけなければならない。並行して、昨年来の緊張の根源であるガザの戦闘を収束させるよう一層の努力を払う必要がある。

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