2021年に韓国内で初めて市場に出回り、大手百貨店で販売されたルビーロマン。日本国外では品種保護の手続きがされていない=中村彰宏撮影
◆韓国国立種子院に品種名称を取り消す申請も
「この出願商標は需要者や取引界においてブドウ品種の普通名称として認識されており、自他商品を区別できる識別力がないため、登録を受けることができません」 韓国特許庁は今年1月、石川県が2022年10月に出願した「Ruby Roman」の商標について、4項目の「拒絶理由」を県側に通知した。県としては商標登録により、韓国内のルビーロマン流通に歯止めをかける狙いがあるが、すでに栽培が広がっている中での登録の難しさを見せつけられた格好だ。 他の拒絶理由には、登録済みの品種名称と同一か、類似する商標は登録できないとの商標法の規定も挙げられた。このため県は最近、品種登録を所管する韓国国立種子院に対し、2021年に登録されたルビーロマンの品種名称を取り消すよう求める申請をした。 だが、韓国政府は本紙の取材に「国内制度に基づき申告した31社が苗木を生産・販売しており、慎重な検討が必要」と見解を示している。◆「徹底的に戦う」と権利主張も法的根拠なく
ルビーロマンは粒の大きさや糖度など厳格な出荷基準を守り、石川県内だけで生産される。ところが2年前、韓国でルビーロマンの名で販売されているブドウを県が鑑定したところ、DNA型が一致。流出した苗が中国経由で韓国に持ち込まれたとの見方がある。石川県産ルビーロマンと韓国産の違い=石川県提供
「徹底的に戦います」。馳浩知事は7月18日の会見で、本家よりも品質の劣るルビーロマンが海外で流通する現状をあくまで容認しない姿勢を強調した。 ただ今のところ、石川県が韓国でルビーロマンに対する権利を主張する法的根拠はない。 国際法上、品種の育成者として外国で権利を得るには、最初に流通してから6年以内に各国で品種保護の手続きを行う必要があるが、2008年に初出荷されたルビーロマンはこの期間を過ぎていた。いくら日本の世論が「盗まれた」と憤っても、育成者権や商標など知的財産保護の手続きがされていない以上、海外では誰でも栽培できる状態になっている。◆「大化けするかは分からなくても最初に取得が望ましい」
同様に日本で開発されたが権利が保護されていない「シャインマスカット」も、韓国で大規模に生産されている。国外から導入した品種を含め、効率的な栽培で収益性を高めようとする韓国農業のスピードは速い。 日韓間で先端農業技術のコンサルタントや農業資材輸入を手掛ける石坂晃さん(54)=福岡県=は「新たな品種を育成するときには(ルビーロマンのように)大化けするかは分からず、悩ましさがある。それでも最初が肝心で、開発した段階で海外での育成者権や国際商標を取得しておくのが望ましかった」と話す。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。