司法省は長年にわたり米要人を狙ったイランによる報復を警戒してきた=ロイター

【ワシントン=赤木俊介】米司法省は6日、米国内で政治家または米政府関係者を狙った暗殺計画を企てた疑いでパキスタン国籍の男性を訴追したと発表した。司法省は計画が遂行される前に容疑者を拘束したと説明している。

起訴されたアシフ・マーチャント容疑者(46)はイラン滞在後、2024年4月ごろにパキスタン経由で米国に入国した。6月に殺し屋を装った捜査官と接触し、米政治家の暗殺を持ち掛けた。標的の自宅から書類やUSBメモリーを盗み出し、政治集会で抗議を組織する計画も企てていた。

捜査官らに前金5000ドル(およそ72万円)を支払い、自身が米国外へ出国してから計画に移るよう指示していた。容疑者は出国を予定していた当日の7月12日に拘束された。容疑者はイランとパキスタン両国に妻子がいると証言した。

ガーランド司法長官は声明で「司法省は長年に渡り、米政府関係者を標的としたイランによる大胆で絶え間ない報復工作に対抗するため尽力してきた」と説明した。トランプ前政権時の20年1月に米軍は、イラン革命防衛隊で対外工作などを担う精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害したという経緯がある。

米メディアは7月中旬、米当局がトランプ前大統領を狙ったイラン政府による暗殺計画の情報を入手したと報じていた。今回起訴されたマーチャント容疑者と、7月に東部ペンシルベニア州の集会でトランプ氏を銃撃したトーマス・マシュー・クルックス容疑者(20)の接点はないとみられる。

米連邦捜査局(FBI)のレイ長官も声明で、暗殺計画が「イランのプレーブック(作戦集)そのままだ」と批判した。レイ氏はトランプ氏を狙った銃撃事件を巡り、7月に開かれた連邦議会下院の公聴会で「イラン政府は(ソレイマニ氏の殺害を理由に)米政府関係者を狙った報復を公に呼び掛けている」と証言していた。

イラン外務省のカナニ報道官は7月、同国がトランプ前米大統領の暗殺を企てているとの報道を否定する声明を発表している。

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