ロシアへの越境攻撃について、ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、ビデオ演説で「ロシア軍からのスジャの町の解放が完了したと総司令官から報告を受けた」と述べ、ロシアからヨーロッパへのガス輸送の拠点があるスジャを制圧したと主張しました。

ロシア国防省は16日、越境したウクライナ軍を撃退する作戦を続けていることを明らかにしていて、アメリカがウクライナに供与した高機動ロケット砲システム=ハイマースなどをミサイルで破壊したなどとしています。

こうした中、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は16日、越境攻撃について「公正な交渉プロセスに入るようロシアを説得するためだ」とSNSに投稿し、何らかの交渉を行うためにロシアを説得することがねらいだと強調しました。

一方、ロシアのパトルシェフ大統領補佐官は16日、ロシアの有力紙「イズベスチヤ」のインタビューで「クルスク州での作戦は、NATO=北大西洋条約機構と西側の特殊部隊も参加して計画された」と主張し、欧米諸国が越境攻撃を支援しているとして非難しました。

専門家 “越境攻撃は精鋭部隊が投入されている”

ウクライナ軍による越境攻撃について、ウクライナの軍事専門家 オレクサンドル・ムシエンコ氏はNHKのインタビューに対して「この作戦に参加しているのは、よく準備された旅団や部隊などだ。戦場で何が起きるかが分かっている」と述べ、ロシア軍との戦闘経験を積み重ねてきた精鋭部隊が投入されていると指摘しました。

その上で、ウクライナ軍は攻撃を進めるにあたって、自国の無人機を使うだけでなく、妨害電波を出すなどの電子戦も展開し、ロシア軍の無人機を無力化する戦術もとったとしています。

また、越境攻撃を仕掛ける前からロシア領内にある航空基地などへの攻撃を続けてきたことについて、「越境攻撃に向けた準備のようなものだった」という見方を示しました。

そしてムシエンコ氏は、越境攻撃のねらいについて「ウクライナ軍は東部での防衛だけでなく、優れた反攻作戦を行うこともできると世界に示した」と述べ、ウクライナの勝利を諦めるべきでないと世界に印象づける効果もあったと指摘しました。

その上で「ウクライナ軍は『ロシア領内で戦闘を続けてはならない』とか『ロシア領内の軍事施設への攻撃に西側で製造されたミサイルを使用してはならない』といったレッドラインを打ち砕いた」と述べ、欧米側がロシアとの緊張の高まりを避けるためなどとしてウクライナ側に示してきた制限が、撤廃されることに期待を示しました。

今後の展開については「ロシア軍をウクライナから撤退させるという主な目標を達成するために、クルスク州にとどまるだろう」と述べ、ウクライナはロシアとの交渉材料として掌握した領土を最大限生かすという見方を示しました。

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