92年ぶりの快挙が話題となった「初老ジャパン」。

その裏にあったのは、馬術ならではの苦労と、それを支えた家族の絆だった。

北島隆三選手:メダル取れて良かった。

家族の前で見せる父としての顔や、夢にまで見たメダルに懸けた想いを取材した。

■92年ぶりの快挙 大逆転で銅メダルに輝く

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北島隆三選手:ただいま。

北島選手の妻 笑子さん:おかえりなさーい。

北島隆三選手:(食事が)豪華やん。今日はめちゃくちゃ豪華。

正月以来、8カ月ぶりに滋賀県甲賀市の自宅で家族と食卓を囲むのは、北島隆三選手。

「初老ジャパン」と聞けば、ピンとくる人も多いはず。北島さんは、パリオリンピックで日本勢として92年ぶりのメダルを獲得した、総合馬術団体の4人のうちの1人だ。

“ホーストライアスロン”とも呼ばれる総合馬術。3日間かけて3組の人と馬が、3種目で競う。

1日目はステップを踏むなど、美しさや調教の出来を競う「馬場馬術」。2日目は自然の中をダイナミックに走行する「クロスカントリー」。

ここまでで3位と、メダルを狙える位置にいた。

ところが、最終種目の障害馬術を前に北島選手が乗る馬にケガが見つかり、まさかのリタイア。

20点減点で5位に転落して、代わりに加わったリザーブ・田中選手が1本もバーを落とさないパーフェクトを決めると、なんと、全員が奇跡のパーフェクト。大逆転で銅メダルに輝いた。

表彰式で喜びを語った選手たち。

大岩義明選手:われわれにとって歴史的なことです。みんな今、喜んでいるに違いありません。

北島隆三選手:われわれの強さでメダルを取ることができました。

■世界と戦うため…家族と離れヨーロッパを拠点に

快挙から7日。

大岩義明選手:初老ジャパン、ありがとう!

そんな初老ジャパンが祝杯を挙げたのは、日本ではなくイギリスだった。北島選手と田中選手が共同生活している家だ。

日本国内では、まだまだ環境が整っておらず、レベルの高いヨーロッパに身を置かなければ世界とは戦えないのが現実で、4人とも、ヨーロッパを拠点にしている。

田中選手は13年、北島選手は9年。それぞれに単身で、イギリスで技術を磨いてきた。

田中利幸選手:熟年夫婦。しゃべらなくても分かるというか。

北島隆三選手:自分の娘と費やしている時間より、(田中選手と)一緒にいる時間の方が長いですからね。

家族との時間を犠牲にして、夢を追いかけてきたのだ。

北島隆三選手:いやいや、重いですよ。このメダルの重みが、僕たちがやってきた重みを感じる。

大岩義明選手:これを取るためにさ、人生懸けてさ、死にかけてさ。

北島隆三選手:骨の1本、2本のレベルじゃないですよ。

それでも馬に乗りたいって思ってたし。それでも(メダルを)取りたいって思ってましたから。

メダル獲得をきっかけに、注目度や環境も変わっていくことに期待したい。

■乗馬クラブ、そして家族の支え「馬だけに集中できる環境を作ってあげたかった」

北島隆三選手:帰りました!

乗馬クラブクレインオリンピックパーク一同:おかえりなさーい!

8月16日、北島選手と田中選手は、ヨーロッパに送り出し、支えてくれている所属先の乗馬クラブを訪ねた。

オリンピックの後、乗馬体験の申し込みは通常の10倍になったとか。

みんなで記念撮影をする時の掛け声は…。

乗馬クラブクレインオリンピックパーク一同:初老!ジャパーン!

北島隆三選手:何ちゅう掛け声や!

馬術界の未来のため、後を追う後輩に、熱心に指導する。

北島隆三選手:僕たちは会社員なので、イギリスで活動するにあたって、従業員、全スタッフに理解していただく。そしてうちの会員約4万人の全員のサポートがあって、ようやく僕らが活動できるので。

少しずつでも日本の中で認知度が上がっていけば、未来の選手たちがもっともっと活躍しやすい環境っていうのは整ってくると思いますので、微力ながら少しでも力になれればなという風に思っています。

支えてくれているのは、離れて暮らす家族も同じだ。

北島選手の妻 笑子さん:不思議な感じよね?なんか知らん人みたいね、知らん人。知ってるけど、知らん人。

北島隆三選手:なんでやねん。

子育ては、日本に残る妻・笑子さんが一手に引き受けてきた。

北島選手の妻 笑子さん:もう馬だけに集中できる環境を作ってあげたかったので。もう役割分担をしようっていって。『もう自分は馬のことをしてください。私は子供のことをします』っていう役割分担をバチっと作って、それでやってます。

北島隆三選手:ええ奥さんやね。なかなかおらへんよ。『あんたもっと(育児を)やりなさいよ』っていう奥さんばっかりやろ、普通。普通そうやと思うけど。

Q.寂しくない?

北島選手の次女 一響(かずき)さん:最初は寂しかったけど、慣れたというか。

Q.でも帰ってきたときはうれしい?

北島選手の次女 一響さん:うれしい。

北島選手の妻 笑子さん:ホッとしたでしょ?満足気やん。

北島隆三選手:俺?そやね。良かった、良かった。

Q.自慢のお父さん?

北島選手の妻 笑子さん:言ってあげて。

北島選手の長女 華音さん:うん。

照れ隠しなのか、冗談めかして答える華音さん。

北島隆三選手:うそっぽい!

北島選手の長女 華音さん:みんなに言われる。『自慢のお父さんやな』って。

北島選手の妻 笑子さん:なんて答えるの?

北島選手の長女 華音さん:そうですねーって。

記者:自慢のお父さんだそうですよ。

北島選手の妻 笑子さん:言われてどうですか?

北島隆三選手:良かったよね。メダル取れて良かったよね。良かった。良かった、良かった。助かった。

メダリストになった父親。愛する家族に支えられながら、今後も日本馬術の未来を切り開いていく。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年8月20日放送)

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