ヒズボラの指導者ナスララ師のテレビ演説を見る人々(25日、ベイルート)=ロイター

イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが、互いに大規模攻撃を仕掛けた。これまでの散発的な交戦に比べ、一気に激しさを増した。中東の緊張を増幅するものだ。これ以上の衝突激化を避けなければならない。

ヒズボラはイランを後ろ盾とし、兵器を豊富に持つ。320発以上のロケット弾をイスラエルに向けて発射し、報復の「第1段階」を完了したと表明した。必要があれば追加攻撃も辞さない構えだ。

ヒズボラは7月に司令官がレバノンの首都ベイルートでイスラエル軍に殺害され、報復を予告していた。イスラエルは攻撃を察知、約100機の戦闘機でヒズボラの拠点を先制攻撃したと表明した。

双方とも標的を軍事施設に絞っており、全面戦争は望んでいない。一方で互いに攻撃継続をちらつかせ、強気の姿勢を崩そうとしない。誤爆や誤解で報復の連鎖に陥る恐れがある。双方に最大限の自制を求める。

ヒズボラはイスラエルと交戦するパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスに呼応し、イスラエルを攻撃してきた。鎮静化には、昨年10月から続くガザの戦闘をまず止めなければならない。

ガザ停戦と人質解放に向けては仲介するバイデン米政権が交渉の妥結を強く促した。しかしイスラエルとハマスの主張は平行線をたどり、早期合意の道は険しい。

ガザの戦闘が収束しないままイスラエルとヒズボラとの戦いが本格化すると、収拾はいっそう難しくなる。国際社会は停戦圧力を緩めてはならない。手を尽くして当事者に譲歩を促す必要がある。

イランにも抑制的な対応を続けるよう求めたい。7月に首都テヘランでハマスの最高指導者だったハニヤ氏を殺害され、イスラエルの仕業と断じて報復を宣言したが、実行を控えている。

効果的な手段を選びあぐねている可能性があるが、報復に踏み切ると中東の混迷はいよいよ深まる。各当事者の自制の積み重ねが、今は特に重要だ。

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