23日の国会で、日銀の植田総裁は、改めて利上げの可能性を示唆する一方で、不安定な状況にある金融市場を注視していく必要性を示した。
また専門家は、主要国の中央銀行総裁などが参加する「ジャクソンホール会議」に日銀トップが欠席したことは、大きな機会損失となる可能性があると指摘している。

利上げ継続の可能性示唆

日銀の植田総裁は、引き続き、利上げを行っていく可能性を改めて示唆した。

衆院・財務金融委員会に出席した植田総裁
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日銀・植田総裁:
私どもの見通しに沿って、経済物価が推移していれば、それに沿って金融緩和度合いを調整していくという姿かなと思っております。

23日、国会で答弁した植田総裁は、利上げの可能性を示唆する一方で、金融市場は引き続き不安定な状況にあるとし、高い緊張感を持って注視する必要性を示した。

2023年8月5日の円相場

日銀が先月、追加利上げを決めた後、東京株式市場では、日経平均株価が過去最大の下落幅を記録するなど乱高下したほか、円相場では急速に円高ドル安が進行した。

重要な国際会議に日銀トップ欠席…

「Live News α」では、経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

海老原優香キャスター:
今回の閉会中審査について、馬渕さんはどのようにご覧になっていますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
ニュースにもあった通り、アメリカでは今、非常に重要な会議である「ジャクソンホール会議」が開催されています。

この会議では、主要国の中央銀行総裁などが、ざっくばらんに議論を交わすことが有名で、本音も出やすいと言われています。 

日本は利上げに舵を切り、政策を大きく転換しているので、本来であれば日銀のスタンスを国際的な場所で表明する良い機会だったわけですが、植田総裁は閉会中審査に出席するため、こちらを欠席しました。

海老原キャスター:
日本にとっても、今回の会議の欠席は大きな損失だったということなんでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
ジャクソンホール会議では、今後の世界の動向が決まることがよくあります。例えば、過去アメリカが「利上げ」に舵を切ったのも、ジャクソンホール会議が起点となっていますし、今回はアメリカが「利下げ」に政策転換するメッセージを確認する重要な会議になっています。

ここに日銀トップ不在という、この機会損失は大きいかもしれません。

利上げ理由の深掘りが国民の不安解消に

海老原キャスター:
日銀としては今後、どういった対応が求められるのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
今、株や為替の乱高下が続いていますが、これは、日銀の利上げだけが要因ではなく、アメリカの景気後退懸念も重なったためです。

しかし今、国民が知りたいことは、「日銀が何を基準に物事を考えていて、今後どんなアクションを取りうるのか」ということです。

閉会中審査を私も拝見していましたが、特に深く掘り下げてもらいたかったのは、「GDPギャップがマイナスであることに加えて、所得から税金・社会保障費を引いた可処分所得、つまり、本当に使える家庭のお金が減少している中で、なぜ利上げしたのか」

さらには「実質賃金は、今はプラスに浮上したが、これは一時的である可能性があり、決して個人消費が好調で浮揚しているわけではない。その中で利上げを継続的に行うことは、経済学のロジックから逸脱していないのか」

「逸脱していないならば、何をベースにこれから判断を進めていくのか」

こうした議論をして欲しかったと思います。
批判だけではなく、未来に向けてどう進んでいくのか、そんな議論ができると、国民の不安を取り除くことができると思います。

海老原キャスター:
先行きが見通せない中、不安を抱えている方も多いと思います。今後の動向を注視していく必要がありそうです。
(「Live News α」8月23日放送より)

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