【バンコク=藤川大樹、北京=石井宏樹】フィリピンと中国が領有権を争う南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島のサビナ礁付近の海域で、中国海警局の艦船が26日、フィリピン沿岸警備隊の巡視船の補給活動を妨害した。中国海警局の艦船は25日にも、同礁近くでフィリピン漁師たちへの食料や燃料、医薬品などを運んでいた漁業水産資源局の船に衝突したり、放水銃を浴びせたりしており、緊張が高まっている。  フィリピンからの情報によると、沿岸警備隊の巡視船2隻は26日朝、西部パラワン島の港を出発。サビナ礁に配備されている巡視船「テレサ・マグバヌア」の補給に向かったところ、中国海警局の艦船に行く手を阻まれたり、追跡されたりして物資を届けることができなかった。サビナ礁はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にある。同礁では中国が埋め立てを始めたとされており、フィリピンは4月以降、巡視船を配備している。

◆「記者を船に同乗させて撮影し、事実をゆがめている」

 沿岸警備隊で南シナ海問題を担当するジェイ・タリエラ報道官は、中国がサビナ礁で攻撃的行動を加速させる背景について「フィリピンが巡視船のプレゼンス(存在)を強化していると思い込んでいる」と指摘。「中国側は巡視船が既に半座礁状態にあり、前方展開基地に転用されるだろうと主張している」と話した。  中国側は海警局だけでなく、国家安全省も27日にフィリピンを非難する声明を出し、対抗姿勢を強めている。南シナ海問題で米国と連携を深めるフィリピンをけん制。「記者を船に同乗させて撮影させることで事実を歪曲(わいきょく)し、誇大宣伝している」などと、フィリピン政府による国際世論づくりにも神経をとがらせている。 

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