ロシアのプーチン大統領は2日夜遅くモンゴルに到着し、3日フレルスフ大統領と首脳会談を行いました。

ウクライナヘの軍事侵攻をめぐり、ICC=国際刑事裁判所は、プーチン大統領に対して戦争犯罪の疑いで逮捕状を出していて、ICCの加盟国のモンゴルは、プーチン大統領が入国した場合、逮捕する義務があります。

しかし、モンゴル政府は逮捕はせず、首脳会談の前には歓迎式典も行われました。

ICCが2023年3月に逮捕状を出して以来、プーチン大統領がICCの加盟国を訪問するのはこれが初めてです。

ロシア国旗掲げ プーチン大統領の歓迎ムード演出

モンゴルの首都、ウランバートル中心部のチンギス・ハーン広場にある議会などの建物には、3日、モンゴルの国旗とともに巨大なロシアの国旗が掲げられていました。

広場の周辺の道路沿いにも、モンゴルとロシアの国旗が数多く見られ、プーチン大統領の歓迎ムードを演出しています。

ただ、地元の人たちによりますと、ほかの国の首脳が訪問する際には市内の広い範囲で旗が掲げられるのに対し、今回は広場周辺でしか見られず、対応の微妙な違いが感じ取れるということです。

一方、広場の周辺では、現地時間の正午ごろ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に抗議する市民グループのメンバー5人ほどが、ウクライナ国旗を持って集まりました。

しかし、すぐに治安部隊に取り囲まれ、もみ合いになりました。

そして、到着した警察の車両に押し込まれるように乗せられて、全員がその場から排除されました。

また、周辺では、これとは別に、顔に「NoWar」というペイントをした人も、治安部隊に拘束されたということです。

ロシア中国の間でバランス取る モンゴル外交

モンゴルは隣接する2つの大国、ロシアと中国の間でバランスを取りながら外交を続けてきました。

このうち、ロシアについては近年、5年に1度、ノモンハン事件の式典にあわせて大統領をモンゴルに招くことが慣例となっていました。

ただ、今回の訪問については、ICCがプーチン大統領の逮捕状を出した後だっただけに、欧米各国を中心に批判を招くことは予想されていました。

しかし、モンゴルにとってロシアは重要な貿易相手国です。

特に、石油や石油製品の輸入は90%以上をロシアに頼っているほか、モンゴル国内ではまかなえない電力をロシアから購入していて、モンゴルとしてはロシアとの関係を重視せざるを得ません。

モンゴル政府から説明はありませんが、こうした背景もあることから、慣例どおりプーチン大統領を招き、逮捕状を執行しないという判断に至ったものとみられます。

ICC主任検察官 “モンゴルにはプーチン大統領を逮捕する義務”

ICCのカーン主任検察官は2日、オランダのハーグでNHKの単独インタビューに応じました。

ICCは、ウクライナ情勢をめぐる捜査の過程で、ロシアのプーチン大統領など6人に、戦争犯罪などの疑いで逮捕状を出しています。

そのプーチン大統領がICCの加盟国のモンゴルを訪問していることについて、カーン主任検察官は「すべての加盟国は裁判所に協力する義務を負う」と述べ、モンゴルにはプーチン大統領を逮捕する義務があると指摘しました。

その上で「私たちは脅かされたり圧力をかけられたりしても、正義に反する行為に目をつぶることはできない。私たちはウクライナで進行中の紛争の証拠を追及していく」と述べ、今後、ほかの容疑についても捜査し、責任を追及する可能性もあると強調しました。

また、中東情勢をめぐりICCの検察局は、イスラエルのネタニヤフ首相やイスラム組織ハマスのシンワル最高幹部などに戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑いで逮捕状を請求し、裁判官が証拠などをもとに検討を進めています。

これについてカーン主任検察官は「パレスチナとイスラエルを含むあらゆる状況について同じ法の基準を適用していないと思われたら、法の支配は崩壊してしまうだろう」と述べ、法にもとづいて平等に責任を追及する重要性を訴えました。

そして、日本がICCの最大の資金拠出国であることに触れ、「日本の立場や国際的な価値観がICCを守るために必要だ」として、日本が果たす役割に期待を示しました。

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