最高裁前では中絶の権利擁護派が抗議活動をした=ロイター

【ワシントン=芦塚智子】米連邦最高裁は24日、西部アイダホ州の中絶禁止法が病院に緊急医療の提供を義務付けた連邦法に違反するかどうかを巡り口頭弁論を開いた。保守派判事から州側の立場に理解を示す発言が相次いだ一方、リベラル派の判事は州法を批判した。7月初めまでに下す判断は、中絶を禁止する他州にも影響を与える。

アイダホ州の州法は、母親の死を防ぐために必要な場合などを除いて中絶をほぼ全面禁止する。中絶を実施した医療関係者は5年以下の禁錮刑を受ける恐れがある。2022年に最高裁が中絶の権利を否定する判断を下したのを受けて発効した。

焦点は、連邦政府の補助金を受ける病院に対し、医師が緊急性があると判断した患者には「状態を安定させる措置」を取ることを義務付けた連邦法「EMTALA」だ。バイデン政権はこうした措置に中絶が含まれると主張し、アイダホ州の中絶禁止法はこのEMTALAに違反するとして提訴した。

州側は、EMTALAの目的は病院による緊急患者の受け入れ拒否を防ぐことで、中絶には触れていないと指摘。政権による恣意的な拡大解釈だと反論している。

口頭弁論では保守派判事から政権側の弁護士に厳しい質問が相次いだ。アリート判事は、EMTALAは胎児にも緊急医療措置をするよう定めており、同時に中絶を義務付けるのは矛盾しているのではないかと疑問を呈した。

リベラル派のケーガン判事は、母親に死亡の危険はなくても、中絶しなければ生殖器を失うほか再び妊娠できなくなる場合もあり得ると指摘。「それでもアイダホ州法はここでは中絶はダメだと言い、そうした患者はヘリコプターで州外に移送される結果になっている」と州法を批判した。

バイデン政権は最高裁が中絶の権利を否定する判断を出した後、EMTALAに基づいて全米の病院に緊急時には中絶を実施するよう通達を出した。中絶を禁止している州でも、原則として連邦法のEMTALAが優先されるとした。

アイダホ州と同様に中絶を禁止している南部テキサス州は、この通達を不服として政権を提訴した。連邦控訴裁が州の主張を認め、政権側は最高裁に審理を求めている。

最高裁は、経口妊娠中絶薬「ミフェプリストン」の流通規制の是非についても審理している。中絶は米世論を二分する問題で、11月の大統領選でも争点となっている。

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