中央アジアのウズベキスタンと日本の大学間連携が進んでいる。名古屋大が1990年代に留学生を受け入れて以来、交流が進み、岐阜大は7月、サマルカンド国立医科大と人材育成などで協力することで合意した。名古屋大で学んだ知見を生かし、母国で活躍する若者もいる。(サマルカンド、タシケントで、稲垣達成、写真も)

ウズベキスタンのサマルカンドで、連携に向けた交流意向書を手にする(左から)サマルカンド国立医科大のリザエフ学長、岐阜大の吉田学長、立ち会った岐阜県の古田肇知事=7月20日

◆岐阜大とウズベクの国立医科大が交流意向書

 「末永く連携し、互いの繁栄につながれば」。7月中旬、岐阜大の吉田和弘学長が観光都市で知られるサマルカンドの国立医科大を訪れ、ジャスール・リザエフ学長と交流意向書を交わし、握手した。  将来を担う医療人材の育成を見据え、若い医師が互いの病院を見学し、1~2週間程度の交換留学をすることを思い描く。吉田学長が「岐阜大はものづくりや人工知能(AI)の研究なども強い。コラボレーションを発展させたい」と伝えると、リザエフ学長は「大学間交流の役割は大きい。岐阜大は特別な存在だ」と応じた。

◆名古屋大は留学生を30年以上受け入れ

 ウズベクと中部地方の大学連携には、積み重ねてきた実績がある。1991年にソ連の解体とともに独立後、法整備を進める際に日本を参考にしたいと要望。それがきっかけで、名古屋大は30年以上にわたり留学生を受け入れてきた。  2005年にはタシケント国立法科大に法整備や人材育成を担う「日本法教育研究センター」を設置。これまでの修了者は81人で、ウズベクで要職に就く人材を多く輩出してきた。

◆不安の中で名古屋大に留学も…「多くの仲間が心の支えに」

名古屋大大学院を修了し、タシケント国立法科大で講師を務めるアスカルさん

 タシケント国立法科大で講師を務めるドジュマノフ・アスカルさん(35)もその一人。教壇に立つ傍ら、東京の法律事務所の現地事務所でコンサルタントを務めたり、法務省で専門家として法改正などに携わったりしている。  17歳までは医師を志したが、「勉強していても、ワクワクしなかった」。自分に向いていないと考え、親戚の提案で法曹界を目指すことに。日本語や法律用語の理解に苦労したが、留学した名古屋大には同郷の仲間が多くいて、精神面で支えになった。  今、母国で講師として働く原動力は、法曹界で活躍する教え子から届くメールだ。「教えを実践してくれていると思うと、やりがいを感じる」と目を細める。

◆ウズベクで教える日本人「研究手法を逆輸入したい」

タシケント工科大で副学長を務める西山さん=本人提供

 ウズベクで活躍する名古屋大ゆかりの人は他にもいる。2022年まで名古屋大で特任講師だった西山聖久さん(43)=名古屋市=は今、タシケント工科大の副学長。2019年にシャフカト・ミルジヨエフ大統領が当時の松尾清一学長を訪ね、「工学教育の充実に力を貸してほしい」と依頼したのがきっかけだった。  工科大の改革に取り組んだ西山さんは、タシケントで名古屋大の講義を受けられる「名古屋大学特別コース」を創設。各分野の教授に講義を収録してもらい、コース受講生に提供している。  ウズベクでは、商談などのアポイントメントが急にキャンセルされることが日常茶飯事。「長期的な視野でものごとを考えられない人が多い」とこぼす西山さんだが、学生らの型にとらわれない発想やフットワークの軽さに可能性を感じている。「与えられたテーマを研究するのではなく、ゼロから価値を生む研究手法を確立し、日本に輸入したい」と、胸を膨らませる。 

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