◆中国メディア「偶発的」「単独」報道、当局の指示か
警察の捜査の結果、「偶発的な事件」で容疑者の単独犯行だったとも報じた。複数の中国メディアが同じ内容を一斉に伝えたことから、中国当局がメディアを通じて事件の状況を改めて公表したとみられる。いずれも動機面に触れていない。 報道によると、男が調べに対し刃物で刺したことを自供した、とも報じた。男は2015年に公共通信施設を破壊した容疑で警察の取り調べを受け、その後保釈されたほか、19年にも虚偽情報を流した公共秩序騒乱の疑いで身柄を拘束されたことがあるという。20日、中国・深圳市の深圳日本人学校で、報道陣の前で涙ながらに被害男児を悼む深圳市民(右)ら=河北彬光撮影
事件は18日午前に起き、母親と歩いて登校中だった男児が路上で中国人とみられる男に腹部を刺された。男児は19日に死亡した。中国当局は同日、日本側に「前科がある者による個別の事案」と説明していた。 江蘇省蘇州市で6月、日本人母子ら3人が刃物で襲われた事件でも、中国当局は詳細を公表せず「偶発的」としており、今回も沈静化を狙い、同様の公表をした可能性がある。 ◇ ◇ ◇◆報道は少なく、事件の情報はSNSやネットで得る市民
深圳日本人学校の男児が刺殺された事件は、国内で関連の情報統制が強まる中でも大勢の中国人が学校まで献花に訪れている。20日までに学校に届いた花は千束を超えた。中国当局は社会の不安定化を懸念して報道を制限しているとみられるが、交流サイト(SNS)を通じて何ら罪のない子の命が奪われた事実が広まり、追悼ムードが静かなうねりとなっている。19日午後、中国・深圳市の深圳日本人学校で、被害男児の冥福を祈り花を手向ける人=河北彬光撮影
20日朝から、学校には花束を携えた中国人が絶え間なく訪れた。警備上の理由で敷地内は部外者が立ち入れず、訪れた人は校門前や付近に置かれた台に花を手向けた。昼ごろになると人はさらに増え、性別や年代を問わず数分おきに訪れては手を合わせていった。涙を流し、追悼の言葉をつぶやく人もいた。◆「私たちが事件を語ることを抑制したいのでは」
深圳市民の女性(35)は、友人から海外メディアの情報を受け取り、事件の詳細を知った。「国内の報道はあまりに少ない。(当局は)模倣犯の発生や私たちがこの事件を語ること自体を抑制したいのでは」と推測する。被害男児が路上で男(44)に刺された状況に話が及ぶと「私にも幼い子がいる。同じ母親として子が傷つけられるのは耐えられない」と涙ぐんだ。20日、中国・深圳市の深圳日本人学校で、被害男児を悼み届けられた花束=河北彬光撮影
取材に応じた複数の中国人が、18日の事件発生からしばらくたっても国内の報道が少ないことに気付き、SNSやインターネット上で情報を得たと証言した。当局が厳しく統制しても、事件を痛ましく思う人が情報を共有し合うことで、被害男児を追悼する動きが広がっているようだ。◆「日本人学校はスパイ養成機関」デマも絶えず
中国で発達する配達サービスを利用する人も多く、配達員が絶え間なく校門前に花を届けた。花束に添えられたカードには中国語で「天国で安らかに」「かわいい子、ごめんね」などの言葉があった。広州、西安、浙江省といった地名も書かれ、中国各地から届いていることが分かる。 中国側は容疑者の男について「前科のある者による個別の事案」とだけ説明し、動機面はいまだ不明だ。ただ、中国のネット上には日本人学校を「スパイ養成機関」だとするデマや日本人を敵視する言論の投稿も絶えない。献花に訪れた中国人の女性は「極端に日本を恨む教育を続ける限り、その感情は次の世代に植え付けられる。未来に向かって語り合えるような社会を願う」と心中を明かした。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。