11月の米大統領選で、若者らに絶大な人気を誇る女性歌手のテイラー・スウィフトさん(34)ら「セレブ」と呼ばれる歌手や俳優などが民主党のハリス副大統領(59)への支持を相次ぎ表明している。その華やかさでは共和党のトランプ前大統領(78)を圧倒しているが、著名人の支持は実際に投票に結びつくのだろうか。(ワシントン・鈴木龍司)

カマラ・ハリス氏(左、8月撮影)とトランプ氏(7月撮影)

◆人気歌手のビリー・アイリッシュさんも

 ハリス氏とトランプ氏の初対決で関心を集めた10日夜のテレビ討論会。特番を組んだテレビ各局は舌戦の直後、一斉に「スウィフトさんがハリス氏を支持」と速報した。  スウィフトさんはインスタグラムに「今夜の討論会を見た。私はカマラ・ハリスに投票する」と宣言。さらに「私は必ず政策を調べる。選択はあなた次第」とも書き込み、ファンらに有権者登録を促した。  グラミー賞の最優秀アルバム賞に史上最多の4度も輝き、「世界で最も影響力のある女性の一人」(フォーブス誌)と評されるスウィフトさんのインスタのフォロワーは約2億8千万人。投稿を経由して有権者登録の情報サイトを閲覧した人は24時間で40万人に達し、改めて存在感の大きさを見せつけた。

テイラー・スウィフトさんのインスタグラムの投稿。ハリス氏について「彼女は才能のあるリーダー」などと、テレビ討論会を見た感想をつづっている(スクリーンショット)

 ハリス氏を巡っては、やはりインスタのフォロワーが3億人を超えるビヨンセさん(43)が自らの楽曲「フリーダム」を提供して話題に。民主党大会には黒人歌手のスティービー・ワンダーさん(74)や女性歌手のピンクさん(45)らが駆けつけ、コンサートさながらの熱気に包まれた。最近では人気歌手ビリー・アイリッシュさん(22)も「(ハリス氏は)生殖の自由や地球、民主主義のために闘っている」と、X(旧ツイッター)で支持を表明した。

◆楽曲無断使用、SNSに偽画像…にじむ焦り

 トランプ氏は一方、「フリーダム」を選挙運動で使ったところ、ビヨンセさん側から無断使用をやめるよう警告を受けた。スウィフトさんの自身への支持を装う偽画像を交流サイト(SNS)にアップし、炎上騒動も招いた。  スウィフトさんは「誤った情報に対抗する最も簡単な方法は真実にある」と非難。トランプ氏は「私はファンではない。彼女は音楽市場で代償を払う」と強弁するが、焦りがにじむ。

◆古くはフランク・シナトラさんがケネディ氏支援

 歴史的に「セレブ」は、リベラルな政策を掲げる民主党の支持者が多い。古くは音楽シーンや銀幕を彩ったフランク・シナトラさんがジョン・F・ケネディ大統領を強く支援。2008年の選挙では抜群の知名度を誇るテレビ司会者で俳優のオプラ・ウィンフリーさん(70)がオバマ元大統領(63)を、20年はレディー・ガガさん(38)がバイデン大統領をそれぞれ全面支援した。  トランプ氏は今回、Xを率いる実業家のイーロン・マスク氏から支援を受け、共和党大会には日本でも人気を博したプロレスラーのハルク・ホーガンさん(71)が登場。「(トランプ氏は)俺のヒーローだ」と支持を呼びかけたが、顔触れは見劣りする。

7月、共和党大会で、Tシャツを破るパフォーマンスを披露してトランプ氏への支持を呼びかけるハルク・ホーガンさん(鈴木龍司撮影)

◆81%が「投票行動変わらない」と回答

 米ペース大のメルビン・ウィリアムズ教授はスウィフトさんの支持表明について「Z世代の若者や女性への効果は大きい」と分析。ただ「特権的で裕福なセレブには労働者や中流階級の暮らしとは無縁との受け止めがある」と、庶民の反発など負の影響も指摘する。  実際、米ABCテレビなどが11~13日に実施した調査では、回答者の81%が「自身の投票行動は変わらない」と答えるなど、影響は限定的との見方もある。  SNSの普及で著名人の発信力が高まる中、ウィリアムズ氏は「スターの発言ばかりが目立てば、候補者の政策など重要なメッセージがかすんでしまう。(支持表明は)もろ刃の剣だ」と語った。 

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