国連総会は、ロシアによる安保理決議案への拒否権行使を受けて会合を開いた=国連提供

【ニューヨーク=佐藤璃子】国連総会は11日、ロシアが安全保障理事会で北朝鮮への制裁状況を調査する専門家パネルの任期延長決議案の採決に拒否権を行使したことを受けて会合を開いた。各国から拒否権行使を非難する声が上がる中、ロシアはパネルの調査が米欧に迎合して偏ったものになってきていると主張。近日中に独自の決議案を提出する意向を明らかにした。

北朝鮮が初めて核実験を実施した2006年以降、国連は安保理決議に基づき北朝鮮に制裁措置を科している。09年には制裁状況を調査・監視する専門家パネルを設置し、以後、年2回報告書を作成してきた。

パネルの任期は1年で、14年にわたり毎年延長されてきた。3月28日の安保理では任期を延長する決議案が採決にかけられたが、常任理事国であるロシアの拒否権行使で否決された。日本や米国など13カ国は賛成票を投じ、中国は棄権した。パネルの任期は4月30日までで、活動が打ち切りとなれば監視体制の弱体化は避けられない。

11日の国連総会でロシアのネベンジャ国連大使は「制裁は北朝鮮の状況改善につながっていない」と指摘。任期延長決議案の採決を前に制裁体制の見直しを求めたものの、理事国に拒否されたと主張した。近日中に「バランスのとれた」任期延長決議案を提出する予定だと明らかにした。

北朝鮮の金星(キム・ソン)大使はロシアによる拒否権行使を高く評価するとし「国連憲章の平等と内政不干渉の原則に反し、主権国家の自衛権尊重の精神に逆らう制裁決議を認めたことはない」と述べた。

日本の山崎和之大使は「拒否権行使は核不拡散をめぐる世界的な体制を弱体化させるものである」と強調し、ロシアが北朝鮮から武器を調達してウクライナ侵略に利用しているとも指摘した。

米国のトーマスグリーンフィールド大使は、14日から20日にかけて日本と韓国を訪問する。訪日目的の一つとして、北朝鮮による武器拡散や制裁逃れなどについて、独立した報告を継続するための対応を協議する予定だという。

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