ネタニヤフ首相 “任務はまだ完了していない”

イスラエル軍は、ヒズボラの最高指導者ナスララ師を空爆で殺害したあともレバノン各地で攻撃を続けていて、レバノン保健省によりますと28日は33人が死亡し、195人がけがをしたということです。

こうした中、ナスララ師の殺害についてイスラエルのネタニヤフ首相が声明を発表し「イスラエル北部から避難している住民の安全な帰還と、この地域の力の均衡を変えるという目標を達成するためにはナスララの排除が必要条件だ」として正当性を強調した上で「歴史的な転換点となり得るところにいる」と述べ成果を誇示しました。

また、パレスチナのイスラム組織ハマスと連帯するヒズボラに打撃を与えることが、ガザ地区でハマスに拘束されている人質の解放につながるという考えも示し「われわれは大きな成果を上げたが、任務はまだ完了していない」と述べ、攻勢を強める構えを示しました。

一方、ヒズボラ側は「ガザやパレスチナを支援し、レバノンを守るために敵との戦いを続ける」としてイスラエルへの攻撃を続けると主張していて、紛争のさらなる拡大が懸念されます。

“革命防衛隊の幹部も殺害”イランの国営通信が伝える

イランの国営通信は28日、イスラエル軍の空爆でイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師とともに、イランの軍事精鋭部隊、革命防衛隊の幹部が殺害されたと伝えました。

バイデン大統領「正義の措置だ」

アメリカのバイデン大統領は28日、イスラエル軍がレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者、ナスララ師を殺害したことについて声明を発表しました。

この中でバイデン大統領は「ナスララとヒズボラは40年間にわたる恐怖政治のもと何百人ものアメリカ人を殺害した責任がある。何千人ものアメリカ人やイスラエル人、それにレバノンの民間人を含む多くの犠牲者にとって正義の措置だ」としています。

また「アメリカはヒズボラやハマスなどイランが支援するテロ組織から自国を防衛するイスラエルの権利を全面的に支持している」と強調するとともに、国防長官に対して中東地域における防衛態勢をさらに強化するよう指示したことを明らかにしました。

その上で、最終的には外交手段を通じてガザ地区とレバノンの紛争を解決することを目指すとしています。

一方、アメリカ国務省は28日、レバノンの首都ベイルートにあるアメリカ大使館の一部の職員やその家族に対し、国外に退避するよう命じました。

イスラエル 市民からはさらなる報復を懸念する声

イスラエル軍が隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師を殺害したことでイスラエルの市民からはさらなる報復を懸念する声も聞かれました。

このうちエルサレムに住む男性は「ナスララ師を殺害したことは歓迎していますが、ヒズボラはさらに攻撃をしてくるでしょう」と話していました。

また、エルサレムに住む女性は「解決策が誰かを殺害することだったのは、悲しいことです。これがよい解決策だとは思いません」と話していました。

また、たびたびヒズボラによる攻撃の標的になっている北部のハイファからエルサレムを訪れていた男性は「ナスララ師が殺害されても次により過激な指導者が出てくるのが心配です」と不安そうに話していました。

ナスララ師殺害で軍事的な緊張高まる

イスラエル軍の報道官は「ナスララがヒズボラの本部でさらなる攻撃の指揮をしていたところをイスラエル軍の精密な攻撃で殺害した」と述べました。

AP通信は専門家の分析としてイスラエル軍はこの空爆で地下施設の攻撃に使われる「バンカーバスター」と呼ばれる、厚いコンクリートなどを突き破って爆発を起こす特殊な爆弾を使った可能性を報じています。

イスラエル軍は、その後もベイルートなどでヒズボラの拠点への空爆を繰り返しています。

またヒズボラの後ろ盾となっているイランは、最高指導者ハメネイ師が声明を出し、「この地域の抵抗勢力はヒズボラとともにあり、ヒズボラを支援している」として各地の武装組織と連帯しイスラエルを強くけん制する構えです。

こうした中、28日、イスラエルの南方のイエメンの方面からイスラエル最大の商業都市テルアビブに向けてミサイルが発射され、イスラエル軍はこれを迎撃したと発表しました。現地ではナスララ師の殺害をきっかけに軍事的な緊張がいっそう高まっています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。