イスラエル軍 参謀総長 イランへの対抗措置とる構え強調

イランは1日、後ろ盾となっているレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者が殺害されたことなどへの報復として、イスラエルへ180発以上の弾道ミサイルを発射し、イスラエルではミサイルの破片にあたって2人がけがをしたと伝えられています。

イスラエルが対抗措置として、イラン国内の石油生産施設を攻撃する可能性も伝えられる中、イスラエル軍のハレビ参謀総長が2日、声明を発表しました。

この中で、ハレビ参謀総長は「イランは民間地域を攻撃し、多くの市民の生命を危険にさらした。われわれは反撃する。重要な標的を特定し、正確に攻撃する方法を知っている」と述べ、対抗措置をとる構えを強調しました。

また、アメリカのニュースサイト「アクシオス」は、ネタニヤフ首相が2日の関係閣僚などとの会議で対抗措置のタイミングと対象について協議したと伝えました。

一方、アメリカのバイデン大統領は2日、ネタニヤフ首相と近く協議する考えを示し、イランへの対抗措置をめぐるイスラエルの対応が焦点になっています。

国連報道官 “イスラエル外相の発表は「政治的な声明」”

イスラエルのカッツ外相は2日、SNSへの投稿で「イランによるイスラエルへの攻撃を明確に非難できていない」などとして、国連のグテーレス事務総長を外交上受け入れられない人物だとして、ペルソナ・ノン・グラータ=「好ましからざる人物」に指定し、イスラエルへの入国を禁止すると発表しました。

この発表について、グテーレス事務総長の報道官は2日の記者会見で、「国連事務総長と加盟国との間で極めて緊迫した状況が生じたことは過去にもあったが、このような表現が使われたことは記憶にない」と述べました。

ただ、法的な入国禁止措置というよりも、カッツ外相による「政治的な声明だ」との受け止めを示し、イスラエル政府との業務レベルでの連絡はとり続けているとしました。

一方で、ことし5月東エルサレムにある国連機関の事務所が、イスラエル人に相次いで放火された事件に言及し、イスラエル政府に対しガザ地区などの占領地も含む地域で、国連の職員の安全を確保する責任を引き続き果たすよう促しました。

自衛隊輸送機 レバノン滞在邦人など退避に備え 周辺国に出発

日本政府は、レバノンに滞在するおよそ50人の日本人などが国外退避する場合に備えて、周辺国のヨルダンとギリシャに自衛隊機を派遣し、待機させることにしています。

3日午前8時ごろ、鳥取県の航空自衛隊美保基地からは、C2輸送機2機が相次いで出発しました。

輸送機は早ければ日本時間の4日、ヨルダンなどに到着し、待機するとみられます。

中東情勢の悪化を受けた自衛隊機の派遣命令は2回目で、去年10月と11月には、イスラエルからの出国を希望した日本人や韓国人など、合わせて129人を日本に運んでいます。

林官房長官 “中東情勢を深刻に懸念 邦人の保護に万全を期す”

林官房長官は臨時閣議のあとの記者会見で「イランによる攻撃を含め、いまの中東情勢を深刻に懸念しており、このようなエスカレーションはまったく認められず、強く非難する。全面戦争に拡大しないようG7を含む国際社会が、すべての関係者に対し最大限の自制を求め、事態の沈静化に向けて努力することが重要だ。わが国として引き続き最大限の外交努力を行っていく」と述べました。

その上で「現時点で在留邦人の生命・身体に被害があったとの情報には接していないが、引き続き緊張感を持って在外邦人の保護に万全を期していく」と述べました。

欧米各国 レバノンから自国民の退避を急ぐ

イスラエル軍が地上侵攻するなど、レバノン情勢がさらに悪化するなか、欧米各国はレバノンから自国民の退避を急いでいます。

このうちイギリスは2日、レバノン国内にいる自国民や配偶者を対象に、首都ベイルートからイギリスに退避するためのチャーター便を初めて運航しました。

さらにイギリスは今後、レバノン国内の空港が閉鎖される事態に備え、地中海の島国キプロスにあるイギリス軍の基地に艦艇や兵士を待機させているとしています。

またアメリカ国務省は、レバノンからの退避についてアメリカ国籍を持つおよそ7000人から問い合わせがあり、このうち100人余りが2日、政府の手配する民間機で退避したことを明らかにしました。

オランダ政府も軍の輸送機をベイルートに派遣し、4日に自国民を退避させると発表しています。

旧宗主国のフランスは、レバノン国内にフランス国籍を持つ人が2万人余りいるとされ、自国民の退避に向けて、9月30日、ヘリコプターを搭載した揚陸艦をレバノンの沖合に派遣しています。

一方、イランとイスラエルの間でも軍事的な緊張が高まるなか、ドイツやフランスは2日、イラン国内にいる自国民に対しできるだけ早く国外に退避するよう呼びかけました。

イスラエル テルアビブ銃撃事件 イスラム組織ハマスが犯行声明

イスラエルの警察によりますと、1日夜、イスラエル最大の商業都市テルアビブのヤッファ地区で、男2人が路面電車の中にいた人や停留所周辺にいた人に向けて銃を発砲するなどして、7人が死亡し、16人がけがをしました。

男2人はヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区の出身だとしています。

この事件について、パレスチナのハマスの軍事部門は2日、「兵士を襲い、銃を奪って英雄的な作戦を実行した」としてハマスの犯行だとする声明を発表しました。

その上で、「イスラエル軍がガザの人々と子どもたちを殺し続けるかぎり、イスラエルの都市では誰かが殺害されるだろう」として、イスラエル軍がガザ地区での軍事作戦を続けるかぎり、こうした行為を続けるとしています。

G7首脳電話会議 米 “イランへの新たな制裁措置協議”

中東情勢の緊迫化を受けて、G7=主要7か国の首脳は2日、電話会議を開きました。

議長国のイタリア政府によりますと、会議では「イランのイスラエルへの攻撃に対する断固とした非難」が表明されたほか、「地域を巻き込む紛争は誰の利益にもならず、外交的解決はまだ可能であることが改めて強調された」として、緊張緩和に向けてG7各国で協力していく方針を確認したということです。

またアメリカ・ホワイトハウスはG7首脳による電話会議について「イランによるイスラエルに対する容認できない攻撃について協議し、新たな制裁措置を含む対応について調整した」と発表しました。

このあと、バイデン大統領は記者団に対し「イランは明らかに道を踏み外している。イランに対して何らかの制裁が科されるだろう」と述べました。

またバイデン大統領は、イスラエルによるイランへの対抗措置が焦点となる中、記者団が、イスラエルがイランの核施設を攻撃することを支持するか質問したのに対し「答えはノーだ。われわれG7各国はイスラエルが対抗する権利があることには同意しているが、相応の措置とすべきだ」と述べました。

イスラエル軍 イランへの対抗措置焦点に

イランは1日、後ろ盾となっているレバノンのヒズボラの最高指導者が殺害されたことなどへの報復として、イスラエルに180発以上の弾道ミサイルを発射し、一部はイスラエル中部や南部に着弾しました。

アメリカ軍は2日、この弾道ミサイルを迎撃する様子だとする映像を公開しました。

東地中海に展開していたアメリカ海軍の2隻のミサイル駆逐艦から、オレンジ色の光を発しながら迎撃ミサイルが発射されています。

イスラエル国内ではこの攻撃で、ミサイルの破片にあたって2人がけがをしたと伝えられています。

さらにイスラエル軍は2日、複数の空軍基地に着弾したものの、航空機などへの着弾はないなどとして、被害は限定的だったとの認識を示しました。

イスラエル側は対抗措置をとる構えで、イラン国内の石油生産施設を攻撃する可能性も伝えられています。

イラン大統領 “イスラエル行動するなら より強力な対応行う”

イランのペゼシュキアン大統領は2日、訪問先のカタールで記者会見し「もしイスラエルが行動するなら、より強力な対応を行う」と述べていて、イスラエル側の動向が焦点になっています。

イスラエル兵8人死亡 ヒズボラとの地上戦激化も懸念

一方、イスラエル軍が地上侵攻した隣国のレバノン南部では、ヒズボラとの地上戦も激化が懸念されています。

イスラエル軍は2日、兵士8人がレバノンでの戦闘で死亡したと発表しました。

ヒズボラ側は国境に近い町でイスラエル軍と衝突したり、別の町でも待ち伏せ攻撃を行ったりして、イスラエル側に死傷者が出ていると主張していました。

ロイター通信などは、1日にイスラエル軍がレバノン侵攻に踏み切って以降、双方の直接の衝突は初めてだと報じています。

またパレスチナのガザ地区では、今月7日で戦闘開始から1年となりますが、イスラエル軍はガザ地区でも攻勢を続けていて、地元の保健当局はこれまでに4万1689人が死亡したとし、犠牲者は増え続けています。

国連安保理 イスラエルとイラン さらなる対抗措置を警告しあう

緊迫する中東情勢を受けて、国連の安全保障理事会の緊急会合が開かれ、各国が事態の沈静化を求める一方、イスラエルとイランはさらなる対抗措置を互いに警告しあう展開となりました。

イスラエルによるレバノンへの地上侵攻やイランによるイスラエルへのミサイル攻撃を受けて、国連の安保理は2日、中東情勢についての緊急会合を開きました。

このうちフランスの国連大使は、イランによるイスラエルへのミサイル攻撃を非難し、「さらなる地域紛争につながる可能性のある攻撃を控えるよう呼びかける」とする一方、イスラエルに対しても「レバノンへの地上侵攻に反対する」として一刻も早い停戦を訴え、各国から事態の沈静化を求める声が相次ぎました。

イスラエルのダノン国連大使は、イランによるミサイル攻撃について「攻撃の規模は想像を超えるものだ。イランはさらなるエスカレートを決めており、イスラエルだけでなく、世界にとって脅威だ」と非難したうえで、「われわれは迅速かつ断固とした対応をとる」と述べました。

これに対し、イランのイラバニ国連大使は「イスラエルによるいかなる侵略行為に対してもイランは必要ならいっそうの防衛的措置をとる用意ができている」と述べ、さらなる対抗措置を互いに警告しあう展開となりました。

またレバノンの代表は、イスラエルによる地上侵攻について「100万人が国内避難民となる人道危機に直面している。このうち数千人が水や食料も無い状態で路上で暮らしている」と述べ、国際社会の支援を訴えました。

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