米サービス業は3カ月連続の「好況」水準だった(米サウスカロライナ州のレストラン)=ロイター

【ニューヨーク=長尾里穂】米サプライマネジメント協会(ISM)が3日発表した9月の米非製造業(サービス業)景況感指数は54.9と前月から3.4ポイント上昇し、2023年2月以来1年7カ月ぶりの高水準になった。市場予想(51.8)も上回った。「不況」の水準にある製造業と比べ、サービス需要の底堅さを示した。

好不況の分かれ目を示す50を3か月連続で上回った。項目別では新規受注の指数が6.4ポイント上昇し、59.4になった。企業活動を表す指数は6.6ポイント上がり59.9だった。

回答企業からは「前年比で売上高が増加に転じている。遅いながらも着実な回復だ」(小売業)、「金利が着実に低下し、自動車と住宅向けのローン申請件数がわずかに増加している」(金融・保険)といった声があがった。「米国の会計年度末による一時的な活動の増加」とする回答もあった。

雇用環境を映す指数は2.1ポイント低下し、48.1だった。節目の50を下回った。サービス分野の求人や採用が落ち着きつつある様子を示した。企業の仕入れ価格を示す指数は2.1ポイント高い59.4で、原材料や中間サービス費用の高騰を示している。

納期を示すサプライヤー指数は52.1と2.5ポイント上がった。同指数は上昇するほど納期に遅れが生じていることを示す。企業からは「注文が期日通りに届く割合が下がった」との声も聞かれた。

「足元の経済環境は比較的安定していた。ただ10月には港湾労働問題が発生するため、この安定は長くは続かないかもしれない」(宿泊・飲食サービス)など、米港湾のストライキへの懸念も広まっているようだ。

調査を担ったISMのスティーブ・ミラー氏は「米サービス業で金利の引き下げは歓迎されている。ただ労働コストと供給の確保が継続的な懸念事項だ」と指摘する。

1日発表の9月のISM製造業の景況感指数は6カ月連続で「不況」水準となる50割れを記録した。サービス業と製造業で景況感に大きな差がある状態が続く。

3日の米市場ではサービス業の景況感が予想を上回ったことを受け、11月以降の米連邦準備理事会(FRB)の大幅利下げの思惑が後退して米金利に上昇圧力がかかった。外国為替市場ではドル買い・円売りが進み、対ドルの円相場は50銭ほど下落して1ドル=147円台を付ける場面があった。

市場は4日発表の9月の米雇用統計に注目する。足元で米景気や雇用への不安はやや薄れているものの、想定外の悪化を示せば市場の動揺を招く可能性がある。

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