中国は統計法を改正して地方の統計不正への監督を強める(北京の人民大会堂)

【北京=塩崎健太郎】中国は地方政府による統計改ざんへの取り締まりを強化する。不正を働いた担当者だけでなく、改ざんを指示した統計部門の責任者らも処罰する。地方では統計不正が絶えず、中国全体の統計に対する不信感が高まっている。

23〜26日に開いた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会で統計法改正案の審議に着手した。26日に改正案の骨子を公表し、意見公募を始めた。

改正案は統計業務に関して「共産党の指導を堅持する」と加え、監督を強める姿勢を示した。地方での統計不正を防ぐため処罰対象を広げる。これまでは幹部自身が不正を働けば処分すると定めた。

地方にある党組織や政府の幹部にとって、任期中の経済成長は自身の出世を左右する。なかでも省や市の域内総生産(GDP)は重要な指標だ。成果を焦る幹部らによる統計不正の疑惑は以前から絶えない。

内陸部の河南省は1月、名目域内GDPに関して1年前に発表した22年の域内GDPを5%下方修正した。修正額は約3000億元(約6兆5000億円)で、省内の市が一つ消えるほどの規模だった。

本来ならマイナスだった名目成長率をプラスにするため、22年の数値を修正したとの疑惑が浮上した。江西、福建、湖南の3省でも22年の名目値が2〜3%下振れした。

中国では中央政府の統計運用も恣意的だとの指摘が多い。

国家統計局は23年7月分から若年失業率の公表を突然停止した。23年12月分から公表を再開したものの、従来含んでいた現役学生を除いた基準に変わった。失業率は低くなったが、基準変更がもたらす修正幅など詳細な説明はなかった。

22年10月の共産党大会期間中には、予定していた同年7〜9月のGDP発表を突如延期した。地方政府だけでなく中央政府も恣意的な運用という疑念を晴らさなければ、中国の公式統計への信頼は回復しにくい。

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