中国が周辺で大規模軍事演習を実施するなど台湾情勢に注目が集まっていますが、そんな台湾の重役ポストに異例の抜てきをされた日本人がいます。どんな人物か、独自取材です。
14日、中国軍が前触れもなく台湾を取り囲むような形で大規模な軍事演習を行いました。
空母からは、軍用機が飛び立ちロケット軍も参加しました。
台湾への威嚇を強める中国。
演習に踏み切ったきっかけの1つとみられるのが、10月10日、台湾の建国記念日にあたる「双十節」の日に行われた演説です。
2024年5月に就任した頼清徳総統。台湾のかじ取りを担うトップです。
双十節の式典では、初となる頼総統の演説を聴くため、会場には多くの市民が訪れていました。
台湾・頼清徳総統:
中華人民共和国は台湾を代表する権利はない。
その姿を関係者席から見守っていたのは、台湾在住の日本人・野崎孝男さん(50)。
実は野崎さん、日本の内閣にあたる台湾の行政院の政務顧問を務めています。
政務顧問とは、頼政権に直接助言や提言をする重要なポストです。
野崎さんは、最近も台湾企業の日本進出に伴うリスクや課題などを説明するなど、主に日本に関わるさまざまな案件でアドバイスをします。頼総統から求められれば、直接、話をすることもあります。
このポストに外国人が任命されるのは、異例です。
台湾行政院 政務顧問・野崎孝男さん:
頼清徳総統は、こんなに自分のことを信頼してくれていたんだと、本当に驚きとともにうれしさがありましたし、もう一方で責任の重さも感じました。
日本人の野崎さんと台湾。いったい、どんなつながりがあるのでしょうか。
この日、野崎さんとの待ち合わせで向かったのはラーメン店です。
台湾南部の台南市にある「Mr.拉麺」。
名物は、博多とんこつラーメンや北海道みそラーメン、特製から揚げなど地元で愛されている日本食店です。
実は、野崎さんはこの店のオーナーで、本物の日本のラーメンを味わってもらいたいと2011年から台湾で日本食店の経営に乗り出し、今では台湾全土で9店舗を展開する地元ではちょっとした有名人です。
「Mr.拉麺」の店長は「野崎社長は、真面目で一生懸命な上司で、何事にも解決策があるという考えを与えてくれます」と話します。
そんな野崎さんがなぜ、頼総統から要職に任命されることになったのでしょうか。
野崎さんと頼総統が信頼関係を築くきっかけとなったのは、2016年2月に発生した台湾南部地震です。
死者の数は100人を超える大災害の中、救出活動の陣頭指揮を執っていたのは当時、台南市長だった頼氏でした。
その時、日本食店を経営していた野崎さんはすぐに被災地入りし、温かい食事を無償で提供するなど被災者や救援活動をするスタッフを支えました。
こうした活動がきっかけで、台南市長だった頼氏と親交を深めたといいます。
野崎さんは、頻繁に自然災害が起きる台湾で何度も被災者支援を行ってきました。
その理由は、台湾への恩返しです。
台湾行政院 政務顧問・野崎孝男さん:
台湾の大学院で勉強をしたとき、台湾の教育部から奨学金をもらっていたんです。奨学金の原資は台湾の方の税金ですよね。教育部の奨学金がなければ、今の私は存在していないのです。台湾の人に機会をもらった。チャンスをもらった。それを自分がある程度成功した、あるいは資源があるときに必ず恩を返す。恩返しをしたい、個人的にずっとある思いのひとつ。
頼氏の信頼を得た野崎さんはその後、頼氏から台南市の外交顧問に任命されます。台湾の地方自治体で外国人が顧問になるのは初めてのことでした。
10年来の信頼関係を築き、要職に任命された野崎さん。今、最も心配するのは中台関係の緊張です。
台湾の主権を訴える頼総統に対して、中国はこれまで度々圧力をかけていて、頼政権への揺さぶりを続けています。
中国からの圧力に対抗するため、野崎さんは、「自由や民主主義といった価値観を共有する日本と台湾の連携がますます重要になる」と強調します。
台湾行政院 政務顧問・野崎孝男さん:
日本と台湾をつなぐありきたりな言葉だけど「懸け橋」的なこと、もしくは歯車がきれいに回るような潤滑油的な役割ができればと思っています。
野崎さんの“台湾と日本の懸け橋”としての手腕に期待が高まっています。
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