17日にシンワル最高幹部の殺害を発表したイスラエル軍は、18日にかけてもガザ地区での軍事作戦を続け、北部ジャバリアでハマスの戦闘員数十人を殺害したと発表しました。

ハガリ報道官は、イスラエル軍がシンワル最高幹部の弟で、去年10月のハマスの奇襲攻撃を計画した1人とされるムハンマド・シンワル幹部などを捜索しているとしています。

同時にイスラエルは、これまで強い対決姿勢をとってきたシンワル最高幹部の殺害は、ガザ地区で捕らわれている人質およそ100人の解放を実現する転機になると見て、アメリカをはじめ、仲介役を担ってきたエジプトとカタールの両国と連絡をとったと報じられています。

このうちアメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相との電話会談でブリンケン国務長官をイスラエルに派遣すると伝えたということで、ガザ地区での停戦などに向けた協議の再開につながるかが焦点です。

一方のハマスは、シンワル最高幹部の殺害についてこれまで公式な反応を示していません。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、シンワル最高幹部の後任にはさらに強硬派の人物が就く可能性があるとする一方、より現実的な選択肢として、交渉力に定評のある、ハマスの政治部門の元トップが就任する可能性もあるという専門家の見方を伝えています。

専門家「戦闘に区切りつけるようなことにはつながらず」

イスラエル・パレスチナ情勢に詳しい東京大学中東地域研究センターの鈴木啓之特任准教授は、イスラム組織ハマスのシンワル最高幹部を殺害したイスラエル側の受け止めについて「現時点でのネタニヤフ首相の発言を見ていると、ガザ地区で続いてきた戦闘の1つの経過であるような位置づけを示しているにすぎず、戦闘に区切りをつけるようなことにはつながっていない」と分析しています。

またハマス側への影響については「ガザ地区内での統治能力や戦闘の遂行能力に関して言えば確かに打撃を受けている状態だが、一方で組織の意思決定をするハマスの重要幹部はまだ生き残っていて、ハマスの壊滅が達成されたとは到底言えない」と指摘しています。

そしてアメリカが停戦などに向けた具体的な協議のため、イスラエルにブリンケン国務長官を派遣する意向を示していることについては「アメリカとしては今回の殺害を1つの契機としてネタニヤフ政権に対しガザ地区での戦闘を収束させてほしいと働きかけていると考えるのが妥当だ」としています。

一方で「イスラエル側としては停戦などの交渉相手として考えられるハマスの指導者を殺害するという状態になり、交渉よりも対決というメッセージが出てしまっている。また、ハマスとしてもシンワル氏を除外されたからといって停戦交渉に応じるようになるかは疑問だ」として、シンワル最高幹部の殺害が戦闘の終結につながることには否定的な見方を示しました。

そのうえで今後の中東情勢については「ガザ地区だけではなくレバノンでの戦闘やイランとの対立など、戦線は十分に拡大しきっている状態で、アメリカが大統領選挙を控えて大胆な外交政策に打って出られないことを考えるとイスラエルがみずからに有利な形で戦闘を続けるだろう」と指摘しています。

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