◆「恐怖を与え、民主派への支援を躊躇させる狙い」か
NUGが声明の中で「最も衝撃的な殺害」と表現したのが、ザガイン地域のシパー村で起きた事件だ。住民6人が殺害され、切断された遺体の一部が民家の柵の上に陳列されていたという。現場を目撃した住民らは本紙の取材に「民間人に恐怖を与え、民主派武装組織『国民防衛隊(PDF)』への支援を躊躇(ちゅうちょ)させる狙いだ」などと憤った。 住民らの証言によれば、約500世帯が暮らすシパー村に17日朝、100人規模の国軍部隊が銃を撃ちながら侵入し、次々と民家に火を放った。事前に「軍が来る」との情報を得ていたため大半の住民は避難していたものの、一部の住民は残っており拘束された。10月19日、ミャンマー北部ザガイン地域のシパー村で、国軍部隊に焼かれた民家(地元住民提供)
国軍部隊が18日昼に去った後、様子を見に戻った男性(25)は、内臓を取り出されて地面に放置された遺体や、柵の上に置かれた頭部や手足を目撃し「ショックを受けた」と振り返る。殺害された6人のうち4人の身元は確認できたが、「残り2人は遺体の損傷が激しく、誰か分かっていない」という。本紙は凄惨(せいさん)な現場を写した複数の写真や動画を確認した。 ブダリンPDFのメンバー(27)らによれば、国軍は兵力が不足しているとされ、部隊には第89軽歩兵大隊などの兵士のほか、警察官や親軍派民兵も交じっていた。いずれも私服だった。一部の国軍兵士は覚醒剤を使用しているとみられ、捕虜の1人は「上官が売っている」と証言した。 住民たちは国軍の再襲撃を恐れ、村へ戻れていない。子供も大人も動揺し、日々の食料も足りていない。日本からザガイン地域の避難民らの支援を続けるウィンチョーさん(59)は「国連や国際社会が手をこまねいているうちに、民間人の犠牲者がどんどん増えていく」と嘆いた。(バンコク・藤川大樹) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。