ジョージアでは26日、議会選挙の投票が行われ、欧米ともロシアとも関係の維持を掲げる与党と、親欧米でEU=ヨーロッパ連合への加盟を前面に打ち出す野党が争う構図となっています。

首都トビリシ中心部の投票所では訪れた市民が1票を投じていました。

ジョージアではことし6月、与党が外国から資金提供を受けているNGOやメディアなどの団体を規制する法律を成立させました。

同様の法律がロシアでも施行され、政権の意向に沿わない人たちが活動を制限されていることから、野党側は「ロシア法」と呼んで、大規模な反対デモを繰り返してきました。

また、法律が成立したあと、EUは「EUの価値観にそぐわない」としてジョージアの加盟手続きを事実上停止しました。

投票に訪れた有権者は「ジョージアにとって非常に重要な選挙です。きょう私たちは輝かしいヨーロッパの未来を選択します」とか「すべてがよい方向に変わることを期待して投票しました」などと話していました。

ロシアに融和的な姿勢を示し、欧米との関係を悪化させてきた与党が政権を維持するのかが焦点で、選挙結果はジョージアの今後の外交政策の方向性を決めるものとして注目されます。

与党 “ロシアと関係維持で平和と安定”訴え

与党「ジョージアの夢」が訴えているのがロシアと安定的な関係を維持することでもたらされるとする平和と安定です。

2008年8月、世界の目が北京オリンピックに注がれる中、ロシアはジョージアからの分離・独立を主張する南オセチアを支援するため、ジョージアへ軍事侵攻しました。

その後、ロシアは「南オセチア」と「アブハジア」の独立を一方的に承認し、今もこの2つの地域に軍の部隊を駐留させていて、ジョージアは、国土のおよそ20%を支配できていません。

さらに、ロシアは2006年から7年間、ジョージアの主力産業の一つ、ワインの輸入を禁止しました。

悪化していたロシアとの関係改善に取り組んできたのが2012年に政権に就いた「ジョージアの夢」です。

「ジョージアの夢」の創設者で、ロシアでのビジネスで財をなしたイワニシビリ元首相は10月20日、西部の都市バトゥミで演説し、今の野党が政権についていたときにロシアの侵攻を招いたと批判しました。

そのうえで「われわれの党以外に、平和と安定を志向する政治勢力はいない。われわれの党だけが経済的な安定を確保できる」と述べ、支持を呼びかけました。

さらに、「ジョージアの夢」は党のPRビデオでもウクライナの荒廃した街の様子を繰り返し流していて、ロシアに反発する野党が政権をとれば、戦争に引きずり込まれると印象づけるねらいがあると見られます。

与党支持者で、ジョージア西部で民泊を営むジャバ・カチャヒゼさん(41)は、ロシアには反感があるとしながらも、ロシアとの関係を維持する与党の方針は正しいと考えていて「国民が正しい選択を行い、安定や平和というこの地域にとって非常に重要なものを選ぶと100%確信している」と話していました。

野党側 “ロシア法”廃止とEU加盟推進訴え

政権交代を目指す野党側が訴えているのが、「ロシア法」とも呼ばれる法律を廃止したうえで、EU加盟を推進することです。

与党「ジョージアの夢」はことし6月、予算の20%以上を外国から提供されているNGOやメディアなどの団体をいわゆる「外国の代理人」として、国への登録を義務づける法律を成立させました。

これに対し、野党側は、ロシアで同様の法律が施行され、政権の意向に沿わない人たちが相次いで活動を規制されていることから、「ロシア法」と呼んで反発し、大規模な抗議デモを繰り返してきました。

法律の成立を受けてEUは「EUの価値観にそぐわない」として、ジョージアの加盟手続きを事実上、停止したため、野党側はこの法律を廃止し、加盟路線への復帰を呼びかけています。

野党の選挙活動にコンサルタントとして参加しているエリサベット・シハルリゼさん(35)は「政府は国民の声を聞かず、西側諸国との関係をすべて断ち切ってしまった。本当に悲しい。この選挙で、私たちは間違いなく政府を変えるつもりだ」と話していました。

専門家 “外交政策や国のあり方決定づける重要な選挙”

ジョージアのシンクタンク、ロンデリ財団のショタ・ウティアシビリ氏は今回の選挙について「ヨーロッパの民主主義国になるのか、孤立主義の道に進むのか、あるいはロシアの影響下で独裁国家となるのかという点で決定的な選挙になる」と述べ、ジョージアの外交政策や国のあり方を決定づける重要な選挙になるとの見方を示しました。

そのうえで、与党と野党のどちらが勝利しても選挙不正が行われたとして選挙結果を認めなかったり、抗議活動が行われたりして、情勢が不安定化する可能性があると指摘しました。

また、10月、大統領選挙と国民投票が行われた同じ旧ソビエトのモルドバでは、EU加盟に向けた流れを阻止するためにロシアが偽情報の拡散や有権者の買収などを行ったとモルドバ政府が批判しています。

ロシアによるジョージアの選挙への介入の可能性についてウティアシビリ氏は「ジョージアでは親ロシア派のコミュニティーは存在せず、ロシア系住民も地元に溶け込んでおり、ロシアメディアの影響力は限られている」と述べ、たとえ介入があっても影響は限られていると分析しました。

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