米政府 “ロシアに北朝鮮部隊派遣”で中国と協議
北朝鮮外相 ロシアに向けピョンヤン出発
NATO事務総長 “北朝鮮部隊 ロシア西部に配置を確認”
ロシア外相 “欧米はウクライナへの軍事支援 正当化”とけん制
アメリカ国務省のミラー報道官は28日、記者会見でロシアに北朝鮮の部隊が派遣されているとして、北朝鮮の後ろ盾である中国と協議し、懸念を伝えたことを明らかにしました。その上で「中国の発言はこの地域における影響力を持っている。ロシアや北朝鮮による安定を損なう動きを中国は懸念すべきだ」と述べ、情勢のさらなる不安定化を避けるため、中国に影響力を行使するよう求めたとみられます。また、国防総省のシン副報道官は28日、記者団に対して、北朝鮮はすでにおよそ1万人の兵士をロシア東部に派遣していて、今後、数週間のうちにロシア軍の戦力に加えられる可能性がある、という見方を示しました。兵士の配置については詳しく言及しませんでしたが、一部の部隊はウクライナに近づいているとした上で、「ロシアがこれらの兵士をウクライナ軍との戦闘に投入したり、ロシア西部クルスク州での作戦の支援にあてたりすることに、懸念を強めている」と述べました。
10月29日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、チェ・ソニ外相がロシアを公式訪問するために、28日首都ピョンヤンの空港を出発したと伝えました。ロシア側の関係者はNHKの取材に対し、チェ外相はロシア側との会談で、キム・ジョンウン総書記によるロシア訪問の実現に向けた調整を行う見通しだと述べ、訪問は年内が想定されているとしています。また会談では、ロシアに派遣された北朝鮮の部隊について議論するとともに、ロシアとの間で署名した有事の際の軍事的な支援などを明記した、包括的戦略パートナーシップ条約をめぐり、今後、協力関係のさらなる発展に向けた協議も行う見通しだとしています。
NATO=北大西洋条約機構のルッテ事務総長は28日、北朝鮮の部隊がロシア西部のクルスク州に配置されたことを確認したと述べたうえで、「ロシアと北朝鮮には直ちにこうした行動をやめるよう求める」と訴えました。NATOは28日、ロシアに派遣されている北朝鮮の部隊をめぐって、日本やオーストラリアなどインド太平洋地域の4か国のパートナー国も招待して理事会を開きました。理事会では韓国政府の代表団から、最新の状況について説明を受けたということです。理事会のあとルッテ事務総長は記者団に対し、NATOとしてウクライナ軍が越境攻撃を行っている、ロシア西部のクルスク州に北朝鮮の部隊が配置されたことを確認したと述べました。そのうえで「ロシアによる戦争の危険な拡大だ。ロシアと北朝鮮には直ちに行動をやめるよう求める」と訴えました。そしてNATOとして事態を注視していくとともに、ウクライナへの支援を強化していく方針を確認したということです。またルッテ事務総長は今後、韓国のユン・ソンニョル大統領とウクライナのウメロフ国防相と電話会談し、対応を協議することを明らかにしました。
ロシアのラブロフ外相は、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに北朝鮮の部隊が派遣されているという指摘を利用して、欧米は、ウクライナに軍関係者を送るなどの軍事支援を正当化しようとしているとけん制しました。ラブロフ外相は28日、モスクワでのクウェートの外相との共同記者会見で、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに北朝鮮の部隊が派遣されていることに関連し、記者団から「このうわさに基づき、ヨーロッパの国々がウクライナへの軍の派遣を呼びかけていることをどう思うか」と質問されました。ラブロフ外相は派遣の事実関係については触れず、「プーチン大統領はウクライナ軍に欧米の軍人が加わって戦っているという具体的な情報を何度も示してきた」と指摘しました。その上で「何かを口実にして、ウクライナに軍隊を派遣するという欧米のこうかつな言い分は、これまでに続けてきたことを、今になって正当化しようとしているにすぎない」と述べ、欧米をけん制しました。こうした中、ロシア国防省は28日、ウクライナ東部ドネツク州で、ロシア軍が要衝ポクロウシク近郊の集落を掌握したと発表し、ロシア軍がウクライナ東部で攻勢を続けているとみられます。
林官房長官は閣議のあとの記者会見で「ロ朝関係を含め北朝鮮をめぐる情勢は平素から重大な関心を持って情報収集や分析に努めているところであり、北朝鮮外相のロシア訪問についても、北朝鮮兵士のロシアへの派遣との関連を含め注視している」と述べました。その上で「最近のロ朝軍事協力の進展の動きは、ウクライナ情勢のさらなる悪化を招くのみならず、わが国を取り巻く地域の安全保障に与える影響の観点からも深刻に憂慮すべきだ。引き続き関連情報の収集、分析を行うとともに、関連する安保理決議の完全な履行や、ウクライナにおける一日も早い公正かつ永続的な平和の実現に向け、国際社会と緊密に連携して取り組んでいく」と述べました。
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