米ミシガン州ディアボーンで不在者投票をする有権者(浅井俊典撮影)
◆「民主党に罰を」あえてトランプ氏支持に転じた
「ハリス氏を確実に負けさせて、民主党に罰を与えないといけない」。今月23日、ミシガン州デトロイト近郊のディアボーン市で、アラブ系の不動産業サムラ・ルクマンさん(42)が語気を強めた。夫はパレスチナ系という。米ミシガン州ディアボーンにある北米最大のモスク「イスラミック・センター・オブ・アメリカ」(浅井俊典撮影)
以前は、イスラエルに批判的な小政党「緑の党」候補のジル・スタイン氏へ投票を呼びかける草の根運動「ハリスを見捨てよう」に参加していた。しかし、ハリス氏を落とすために9月ごろから、あえて親イスラエルを掲げる共和党のトランプ前大統領(78)支持に転じたという。「私たちにあるのは絶望的な痛みと怒りなのです」◆「罪なき者の命が奪われているのに」
国勢調査局によると、ミシガン州には推定約20万8000人のアラブ系が暮らし、州人口の約2%を占める。中でも人口約11万人のディアボーン市は54%。自動車王ヘンリー・フォード生誕の地としても知られ、多くのアラブ系移民が工場労働者として定住したのが始まりとされる。その後も中東情勢が不安定化するたびに増え続けた。 アラブ系は移民政策に寛容な民主党を支持する傾向が強かったが、民間人の犠牲をいとわずに攻撃を続けるイスラエルを支援するバイデン政権に反発。パレスチナへの配慮を示すハリス氏に候補者が代わっても、失望感は消えていない。23日、米ミシガン州ディアボーンで不在者投票をした後、投票先に悩んだと語るザラ・アルマシディさん
不在者投票のため市の行政センターを訪れたアラブ系の介護士ザラ・アルマシディさん(34)は「誰に投票するか葛藤があった」と複雑な思いを語る。前回はバイデン大統領に入れたが、「罪のない子どもや女性たちの命が奪われているのに、誰も支援しようとしない」と語り、今回の投票先は明かさなかった。パレスチナ系の友人もいて、ガザの現状に心を痛める。◆「アラブに手を差し伸べる候補なら」
アラブ系米国人で組織し、ディアボーン市に本部を置く「アラブ・アメリカン政治活動委員会(AAPAC)」は今回、同時実施される下院選や地方選の支持候補は示したものの、大統領選はどの候補も支持しないと発表した。前回はバイデン氏を支持していた。米大統領選でどの候補も支持しないことを決めた経緯を話すAAPAC共同創設者のオサマ・シブラニさん(浅井俊典撮影)
共同創設者オサマ・シブラニさん(69)のもとにはハリス、トランプ両陣営から再考を求める接触があったという。「民主党は破壊と殺りくを止めなかった。トランプ氏も危険すぎる。この状況で誰に投票しようとは言えない」と話す。 ただ、選挙終盤になり両候補がガザに言及することが増えたと感じている。2020年大統領選で同州を制したバイデン氏とトランプ氏の得票差は15万票余り。「アラブ系とイスラム教徒の動向が次の大統領を決める」と主張してきたシブラニさんは言う。「団体の判断は変わらないが、候補がアラブ系に手を差し伸べるのなら、有権者の考えを変えさせるのに遅すぎるということはない」 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。