【ワシントン=浅井俊典、ウエストパームビーチ(米フロリダ州)=鈴木龍司】アメリカ大統領選の投票を翌日に控えた4日、民主党候補のハリス副大統領(60)と共和党候補のトランプ前大統領(78)は、製造業が衰退したラストベルト(さびついた工業地帯)の激戦州などで最後の訴えに声をからした。

◆「勢いは私たちに。後戻りはしない」

 ラストベルトの一角を占めるペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの激戦3州は、かつて民主党の地盤で、党のシンボルカラーから「青い壁」と呼ばれていたが、2016年大統領選ではトランプ氏が制した。2020年はバイデン大統領が3州で勝利し、政権奪還に成功。今回もこの3州が勝敗の鍵を握るとみて、両候補が遊説の締めくくりの場所に選んだ。

演説するハリス氏=8月22日、米シカゴで鈴木龍司撮影

 ハリス氏は4日、3州の中で最も人口の多いペンシルベニア州を集中的に遊説した。最後の集会を映画「ロッキー」の舞台として有名なフィラデルフィア美術館の階段前の広場で開き、この場所は「劣勢をはね返して勝利を手にした人々」を象徴していると説明。高齢不安で撤退したバイデン氏の代わりに出馬し、トランプ氏と互角の勝負を演じるまで追い上げた自身と映画の主人公を重ねた。  その上で「いま、勢いは私たちにある。もう後戻りはしない。私たちが勝利を手にする」と述べ、支持者から大きな歓声を浴びた。「投票はあなたの声であり、その声はあなたの力だ」と呼びかけて演説を締めくくった。  会場には人気歌手のレディー・ガガさんら著名人も応援に駆けつけ、ハリス氏への支持を訴えた。

◆「アメリカンドリーム取り戻す」

 トランプ氏は4日から5日未明にかけて、ペンシルベニア州とミシガン州を精力的に回った。経済と不法移民対策に演説の多くを費やし、バイデン・ハリス政権下の経済を「地獄」「大恐慌」と酷評。「労働者はインフレ災害で負担を強いられ、移民に雇用を奪われている」と持論を展開した。

共和党大統領候補の指名受諾演説に臨むトランプ氏=7月18日、米ミルウォーキーで鈴木龍司撮影

 2016年の選挙で白人労働者を「忘れられた人々」と呼び、その不満を支持に結び付けたトランプ氏は、この日の演説でも「誇り高く、勤勉なあなたたちがこの国を築いてきた」と強調。労働者層への減税や残業代とチップの非課税化などの経済政策をアピールし、「アメリカンドリームを取り戻す」と断言。「(選挙戦は)大差をつけているが、私たちの国を取り戻すために、投票所に行ってもらう必要がある」と繰り返し訴えた。 

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