アメリカ大統領選で勝利した共和党のトランプ前大統領は、米国第一主義を掲げており、日本を含む同盟国との関係に変化が生じることが予想される。大統領に就任すれば、北大西洋条約機構(NATO)などで同盟関係にある国にさらなる負担を迫る方針で、日本にも米軍駐留経費の負担増を持ち出す懸念がある。

◆NATOやクアッド、日米安保は? 国際協調に後ろ向き

 自国の利益を最優先し、国際協調に後ろ向きなトランプ氏は、米国が過度な負担を強いられているとしてNATOを疑問視してきた。こうした姿勢は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現を掲げた日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」などにも及ぶのではとの不安が関係国の間で広がる。

「クアッド」首脳会合を終えて記者会見する岸田首相(当時)=2022年5月24日、首相官邸で

 バイデン政権が二正面対応を迫られたロシアのウクライナ侵攻とパレスチナ自治区ガザ情勢についても、方針を転換する可能性がある。トランプ氏は、ウクライナ侵攻を正当化するプーチン・ロシア大統領寄りの姿勢をとり、ウクライナの戦争を「すぐに終わらせる」と主張。ウクライナに一部領土の放棄を迫って強引に和平交渉を進めるとの見方がある。選挙でイスラエル支援を信仰上の義務とするキリスト教右派の支持を受けたことから、親イスラエル政策を加速させるとみられる。

◆「最大の脅威」中国への対応は?

 中国については「最大の脅威」と位置付けており、中国に60%の関税を課すとしている。さらに中国が台湾に侵攻すれば「150から200%」の関税を課すとけん制。ただ、トランプ氏の外交姿勢は、各国首脳との個人的な関係やその場の利益を優先させるなど一貫性を欠く場合があり、トランプ氏の個人的な判断で対中圧力を弱める可能性もある。(ワシントン・浅井俊典) 

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