【バンコク=藤川大樹】フィリピン政府は27日、中国と領有権を争う南シナ海のアユンギン礁(英語名セカンド・トーマス礁)を巡り、マルコス大統領の就任以来、中国との間で「いかなる合意も結んでいない」との声明を発表した。中国側は紛争を回避するため、ドゥテルテ前政権と「紳士協定」を結び、マルコス政権下でも「新たなモデル」で合意していたと主張。「密約」に関し、両国が舌戦を繰り広げている。

フィリピンのマルコス大統領(資料写真)

 フィリピン軍は1999年、アユンギン礁近くで意図的に座礁させた揚陸艦に軍部隊を駐留させ、実効支配を続けている。同礁付近では最近、フィリピン船が中国海警局の艦船に妨害される事案が相次いでいる。  中国寄りだったドゥテルテ前大統領の報道官を務めたロケ氏が地元紙に語ったところによれば、ドゥテルテ前政権は中国と「現状を維持するという『紳士協定』」を締結した。駐留部隊に届けるのは水や食料などに限り、老朽化が目立つ揚陸艦を修理・補強するための建築資材は持ち込まないとの内容だったという。

◆「中国側のプロパガンダの一環」

 在フィリピン中国大使館は今月18日、「紳士協定」に加え、マルコス政権下でもフィリピン軍との協議を経て、今年初めに「新たなモデル」で合意していたと暴露。「フィリピン側が正当な理由なく一方的に破棄した」と批判していた。  これに対し、フィリピン国防省は27日の声明で「マルコス氏の就任以来、いかなる内部合意も知らず、その当事者でもない」と否定。中国側の主張は「プロパガンダの一環」であり「フィリピンが主権を損なうような合意を結ぶことは決してない」と述べた。  フィリピン国家安全保障会議のマラヤ次長も声明で新たなモデルを「単なる発明」だと一蹴。「大統領の承認がない合意には何の効力もない」と強調した。 

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