アメリカ連邦議会下院は11月13日、「未確認異常現象:真実の暴露」と題された、いわゆるUFO(未確認飛行物体)に関する公聴会を開催した。注目は、4人の参考人の1人として、国防総省元高官で、政府のUFOに関する研究プログラム「AATIP(先端航空宇宙脅威特定計画)」の責任者だった、ルイス・エリゾンド氏が出席したことだ。
この記事の画像(9枚)エリゾンド氏は実際に政府の機密情報に触れ、UFOの調査・研究を行っていただけに、メディアに頻繁に取り上げられている。2024年に発表した回顧録でも「人類は宇宙で唯一の知的生命体ではない」と、地球外生命体の存在にも言及している。2023年7月に開かれた公聴会では、元米軍関係者の参考人から、「墜落したUFOと人間以外の生物を回収した」と衝撃の発言が飛び出した。約1年4カ月ぶりの公聴会に多くの関心が集まった。
政府の隠ぺい体質に批判相次ぐ
「この公聴会が開催されることを望まなかった特定の人物たちがいる」
公聴会では共和党のメイス議員が冒頭発言で怒り気味に不満を漏らした。
メイス氏は公聴会で公開される情報への懸念から、「(開催を望まない)外部の圧力」があったことを認め、それでも開催に尽力した同僚や、出席した参考人に謝意を示した。その上で、政府や国防総省が納税者となる国民への情報公開を渋ることを批判した。特に国防総省でUFOの情報を一元管理・分析するAARO(全領域異常対策室)が「透明性を欠いている。予算さえも一般公開されていない」と厳しく非難した。
AAROは現時点でUFOや宇宙人、地球外技術の存在を認めていないが、メイス氏は「何も存在しないのであれば、なぜアメリカ国民に隠す必要があるのだ」と指摘した。他にも政府の隠ぺい体質を批判する声が次々と挙がった。
参考人「UFOは存在する」地球外技術は軍拡にも
議員らの発言が終わると、4人の参考人は右手を挙げ、真実を証言することを誓ったのちに、冒頭に自身の経験や考えを表明していく。やはり注目を集めたのはエリゾンド氏だ。
「はっきりさせておきたいのは、UAP(UFO※注1)は実在する。高度な技術であり、アメリカ政府や他の政府によって作られたものではない。世界中の機密軍事施設を監視している」
エリゾンド氏は「アメリカはUAP(UFO)技術を保有しており、敵対国の一部も同様だ。私たちは、数十年にわたる秘密の軍拡競争のまっただ中にある」とも指摘し、地球外技術を一部の国の政府が取得した上で、権力者が極秘に管理する中で政府の予算が使われていると述べた。さらに、宇宙には地球外生命体が存在するという証拠があるが、政府高官などによる「陰謀団」がその情報を隠しているとも強調した。その上で、議会に対して、UAP(UFO)に関する内部告発者が危険にさらされている現状も説明し、保護も要請している。
出席した議員からは、UFOの目撃例が絶えないだけでなく、どこで目撃例があるのかについても懸念の声が挙がった。目撃情報の中には、軍事施設周辺や空港などもあるからだ。エリゾンド氏はこの点について「これは新しい傾向ではなく、何十年も続いている」と回答し、敵対的な勢力からの技術によるものが背景にあるとすれば「9.11テロを上回る失敗」とも付け加えた。
※注1)アメリカの公的機関などでは近年、「UFO」は宇宙人の乗り物のイメージやオカルト的な意味合いも強いため、UAP(未確認航空現象)という名称に包括して使用することが多い。
受信トレイから消えた海軍「UFO接近」事件のメール
また、参考人の1人である退役海軍少将のティム・ガローデット氏は、2015年に海軍パイロットがに遭遇した「Go Fast」事件の際に、主任気象学者を務めていた。この時の映像は後にアメリカ政府が公開をしている。
サンディエゴ沖で起きたこの事件の際に、ガローデット氏は「緊急 飛行の安全に関する問題」との件名で、動画が添付されたメールを受け取ったと証言した。そして、本文には「もしこれらが何なのかご存知の方がいれば至急お知らせください。空中衝突寸前の事態が複数発生しており、早急に解決しなければ演習を中止せざるを得ません」という内容が書かれていたという。ただ、このメールは「翌日には、説明もなく、私のアカウントや他の受信者のアカウントから電子メールが消えていた」とし、艦隊司令官などの上官からは一切、この件について説明はなかったという。
ガローデット氏はさらに、2017年に撮影された、議会に公表していないUFOに関する衛星画像の存在にも言及し、「円盤状の物体」と明らかにしたが、撮影された場所などの情報を答えることは拒否した。
トランプ新政権でUFO情報開示は進むのか?
今回の公聴会では、明確な根拠を持って示された新たな情報は少なかった。一方、こうした議会の取り組みは、アメリカ政府の機密情報の開示に向けて着実な一歩になることを期待したい。
公聴会の翌日の14日、AAROはUFOに関する年次報告書を公表した。報告書では「地球外生命体やその活動、技術の存在を示すような証拠はない」と再び強調されていて、数百件の新たなUFO目撃情報の一方で、ほとんどは気球や無人機、航空機などの誤認とされているとした。ただ、21件は説明ができず、分析を続けるという。報告書自体の内容に新鮮味は全く無かった。
2025年1月にはトランプ新政権が誕生するが、トランプ氏自身は「UFO信者ではない」としつつも、選挙中には宇宙人の存在を肯定する発言や、新たなUFO動画の公開にも言及している。新政権の下でUFOの真相解明に向けた動きが加速するのかも注目していきたい。
(FNNワシントン支局 中西孝介)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。