「北欧バルトサミット」は、北欧の5か国とバルト三国の首脳がヨーロッパの安全保障について話し合うもので、今回はポーランドも招いて27日、スウェーデンで行われました。
会議のあと発表された共同声明では「ロシアはわれわれの安全保障に対する最も重大で直接的な脅威であり続ける」として軍事侵攻を続けるロシアと戦うウクライナの防衛産業などへの支援を強めるとしています。
また「大西洋を越えた絆は不可欠だ」と指摘しアメリカとの連携強化の必要性を強調しています。
ただ、アメリカのトランプ次期大統領は、ヨーロッパの安全保障をめぐってNATOへのヨーロッパ側の貢献が少ないと批判し、そのあり方を見直すとしている上、ウクライナ支援の継続にも消極的な姿勢を見せてきました。
ポーランドのトゥスク首相は共同会見で「アメリカの決定がいま見られるようなものになるならば、ヨーロッパ全体がさらに決意を固め、代わりの手段や資金を提供する用意ができていなければならない」と述べ、ヨーロッパ各国が結束を強めることでロシアに対抗していく重要性を強調しました。
スウェーデンの危機感の背景と備えをする住民
スウェーデンではいま、安全保障への懸念がいっそう強まっています。
その背景には、アメリカの大統領選挙で、ウクライナ支援の継続に消極的な姿勢を見せてきたトランプ氏が当選したことや、ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用基準を引き下げたこと、それにロシアによる破壊工作や偽情報の拡散などを組み合わせた「ハイブリッド攻撃」ではないかと疑われる事件が相次いでいることがあります。
ストックホルム市内のIT企業に勤めるマーティン・スベンベルグさん(52)はNHKの取材に対して「私たちのすぐ近くにはロシアがいて、さまざまなことが起きている。さらにスウェーデンはNATOに加盟したので、戦争に備えることはより重要になった」と話していました。
スベンベルグさんの自宅マンションの地下にはおよそ100年前に作られた、鉄製の分厚い扉の付いた共用のシェルターがあります。
これまでも有事に備えて冷凍肉や調味料などを貯蔵してきましたが、シェルターの中で3か月間は生活できるよう、最近になって備蓄をさらに増やしたということです。
スベンベルグさんは「アメリカには引き続き、ウクライナへの力強い支援を期待したい。ウクライナで起きていることをここで止めなければ、ポーランドやフィンランドにも及び、いよいよスウェーデンに近づいてくる。それは共同体であるヨーロッパ全体にとっても大惨事だ」と話していました。
スウェーデン政府 有事への備え訴えるパンフレット全戸配付
ヨーロッパの安全保障に対する各国の危機感は、スウェーデン政府が有事への備えを訴えるパンフレットをすべての世帯に配付することにも表れています。
スウェーデンの民間緊急事態庁が作成した「危機や戦争のときは」と題するパンフレットは、第2次世界大戦中に初めて作られて以来5冊目で、11月から国内のおよそ520万世帯すべてを対象に配付が始まっています。
6年ぶりとなった今回の改訂では戦争にどう備えるべきか32ページにわたって記されていて家庭で食料、防寒具、通信機器などを準備したり、シェルターの場所を確認したりするよう求めているほか、空からの攻撃のおそれがある場合に出される空襲警報は、どのようなサイレンなのかといった説明など、これまでより多くの分野にわたっているということです。
さらに、核兵器についても触れられていて使用された場合は「シェルターに避難するのが最善の防御だ」としています。
また、スウェーデンがことし3月に加盟したNATO=北大西洋条約機構について「加盟国の1つが攻撃されたら、同盟内のほかの国々が防衛のために支援する」と説明するとともに「スウェーデンは攻撃されたとしても決して降伏しない。これに反する情報はすべて誤りだ」とも書かれ、ロシアも念頭に誤った情報に惑わされないよう強調しています。
同じ北欧のフィンランド、ノルウェー、それにデンマークでも最近、政府が相次いで国民にパンフレットや電子メールを送り、有事への備えを呼びかけています。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。