専門家パネルは対北朝鮮制裁決議の履行状況を調べる役割を担っていた=ロイター

【ニューヨーク=時事】国連で対北朝鮮制裁決議の履行状況を調べる安全保障理事会の専門家パネルが、4月30日をもって活動を停止した。任期を延長する決議案にロシアが拒否権を行使し、事実上の廃止に追い込まれた。

日米韓は代替となる仕組みの導入を模索するが、具体化までは「時間がかかる」(外交筋)見通しで、制裁監視体制の弱体化により北朝鮮の核・ミサイル開発に拍車が掛かる恐れがある。

専門家パネルは2009年に採択された安保理決議に基づいて設置。約15年にわたり制裁違反が疑われる事例を調査し、報告書の形で年2回公表してきた。

ただ、ウクライナに侵略し、北朝鮮から武器を調達しているとされるロシアが今年3月、任期を1年延長する決議案に全15理事国の中で唯一反対した。各理事国が「制裁逃れに歯止めが利かなくなる」などと懸念を示す一方、北朝鮮は後に拒否権行使に謝意を表明した。

安保理筋によると、4月にはパネル委員がウクライナを訪問。同国内に1月に着弾したミサイルの破片について、北朝鮮製の弾道ミサイル「火星11」由来だと結論付ける報告書をまとめた。北朝鮮との武器取引は制裁決議で禁じられている。

ロ朝接近を受け、トーマスグリーンフィールド米国連大使は4月、日韓を歴訪して対応を協議。専門家パネルの代替として、国連総会決議に基づく活動▽国連事務総長の要請に基づく報告▽外部機関による調査―などが挙がっているが、予算や調査への協力の確保といった課題があり、「具体的には何も決まっていない段階」(外交筋)だ。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。