世界のプラスチックごみの量は2019年までの20年で2倍以上に増え、各国はプラスチックによる環境汚染を防ぐため法的拘束力のある国際条約をことし中にとりまとめることを国連で決議し先月25日から韓国・プサンで始まった政府間交渉委員会で条文案の合意を目指してきました。
焦点となっているプラスチックの生産量の規制などをめぐり意見の対立が続き、最終日の1日、議長から新たな条文の素案が出されましたが、EUなどの主張を踏まえ、世界的な削減目標を設け、各国が目標達成のためにとった対応やデータを報告するという案と、プラスチックの原料となる石油の産出国などが規制に強く反対していることを踏まえ条約に盛り込まないという案の対照的な2つの選択肢が示されたまま、意見の隔たりが埋められませんでした。
1日午後9時からは最後の全体会合が行われ、交渉委員会のバジャス議長がいくつかの重要な問題をめぐって合意に至っていないとした上で「効果的に対処するためにはさらなる時間が必要だ」と述べて今回の交渉での合意を見送ることを提案し、各国が同意しました。
今後、改めて会合が開かれ、今回の交渉内容をもとに条文案をまとめるための協議が再開されることになります。
専門家 “条約に対する社会の期待は非常に大きい”
環境問題の国際交渉に詳しい東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は「プラスチックの消費や廃棄物の量を減らすために生産についてもできるだけ抑制していく必要があるという国がかなり多くある一方、プラスチックの原料になっている化石燃料の輸出に経済を依存している国は、気候変動対策に加えて化石燃料の生産や輸出を制限されるような国際条約に対しては非常に強い警戒感を持っている」と指摘しました。
その上で「今回の交渉期間で各国がどうしても譲れないところがどこかを明確にでき、一部の条文については合意の道筋が見えてきたものもある。今後の交渉ではプラスチックの生産から廃棄まで包括的な規制と産油国を中心とした懸念をうまくすりあわせていくことが大きな課題になる。条約に対する社会の期待は非常に大きいので、各国には意見の隔たりを埋め着地点を探ることが期待される」と話していました。
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