アリゾナ州議会の傍聴者の中には中絶禁止法廃止に抗議の意を示す人もいた=AP

【ワシントン=芦塚智子】米西部アリゾナ州の州議会上院は1日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じた160年前の州法を廃止する法案を可決した。下院は既に可決しており、ホッブス知事(民主党)が近く署名して成立する見通しだ。

法案は民主党議員全員に加え共和党議員2人が賛成に回り、賛成16、反対14で可決した。アリゾナは11月の大統領選の激戦州の一つ。中絶の全面禁止には無党派や共和穏健派にも反対が多い。共和の大統領候補指名が決まっているトランプ前大統領は、厳しすぎる中絶規制は選挙に不利だとして同州法の廃止を促していた。

民主党のハリス副大統領は選対を通して声明を出し「アリゾナの民主党議員たちが、トランプと彼の過激な仲間が引き起こしたひどい混乱の後始末をした」とトランプ氏を批判した。

アリゾナの中絶全面禁止法はアリゾナが州になる前の1864年に成立し、受精時点からの中絶を禁じる。例外もほとんど認めない。長年凍結状態だったが、州最高裁が4月初旬に効力を認める判断を下していた。

同法が廃止されれば、アリゾナ州では2022年3月に成立した妊娠15週以降の中絶を禁止する州法が適用されることになる。

同州上院の採決では、大半の共和議員が「中絶は殺人だ」「選挙で勝つことより、正しい行動を選ぶべきだ」などと禁止法廃止に強硬に反対した。民主議員は「女性としての選択の権利を他人の宗教の押しつけで奪われたくない」と反論した。

大統領選の激戦州南部フロリダ州では1日、共和のデサンティス知事が主導した妊娠6週より後の中絶を禁止する州法が発効した。6週では女性が妊娠に気づいていないことが多く、全面禁止に近い。

再選を目指すバイデン大統領陣営は、中絶の権利擁護を前面に押し出してアリゾナ、フロリダ両州などで攻勢をかける構えだ。

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