【パリ=北松円香】フランスのマクロン大統領は13日、辞任したバルニエ首相の後継に、仏南西部ポー市市長で中道政党議長のフランソワ・バイル氏を指名した。バイル氏は分裂した議会をまとめ、審議が遅れている2025年度予算案を早急に成立させることが当面の課題となりそうだ。
バイル氏は中道政党「民主運動」の議長を務め、マクロン氏が率いる中道の「再生」と連合を組む。マクロン氏が初めて出馬・勝利した17年の大統領選で支持を表明するなど、同氏とは関係が深い。過去には自身も大統領選の候補になったことがある。
マクロン氏の側近によると、バイル氏は「最も(各党の)合意が得られやすい人選だ」という。
国民議会(下院)では4日、財政再建を目指した来年度予算案を巡ってバルニエ内閣の不信任案が成立した。バイル氏は今後早急に組閣し、予算審議に取り組む。
ただ中道の首相が指名されたことに対し、一部の野党は反発している。仏メディアによると、急進左派の「不服従のフランス(LFI)」は、今後バイル内閣の不信任案を提出する構えを見せている。
7月に決選投票があった下院選で与党連合が敗退した際、マクロン氏がアタル元首相の後継にバルニエ氏を指名するまで2カ月近くかかった。今回は債券市場で仏財政の先行き懸念が強まり、仏国債の金利が大幅に上昇している点を考慮し、首相指名を急いだ。
フランスでは大統領が首相指名の権限を持つ。現在の下院は与党連合を含めて過半を持つ会派がない。内政の停滞を解消するためには、新首相が再び不信任決議の対象とならないように野党と交渉する必要があった。
マクロン氏は10日に各政党の代表を大統領府に集め、首相選出に向けて議論した。ただ同日の会議に、不信任案成立の引き金になった極右の国民連合(RN)と、大統領の弾劾を求めるなどマクロン氏との対立姿勢を崩さない急進左派「不服従のフランス(LFI)」は招かれなかった。
新首相にとって議会運営は困難な道のりになりそうだ。下院で少数派の中道右派で共和党に所属するバルニエ氏は、英国の欧州連合(EU)離脱時にEU側の首席交渉官を務めた。同氏の交渉力を持ってしても分裂した仏議会をまとめきれなかった。
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