【ニューヨーク=西邨紘子】米次期大統領のトランプ氏はこのほど、大統領選挙で民主党候補のカマラ・ハリス氏が優勢とする世論調査を掲載したアイオワ州の地元紙と親会社を訴えた。直近で米ディズニー傘下のニュース番組が同氏との法廷闘争を避け、多額の和解金支払いを決めたことを追い風に、自らに批判的な報道をしたメディアへの攻撃を強めている。
訴えは16日、アイオワ州都デモインの地元紙デモイン・レジスターと親会社ガネットに対して起こした。大統領選挙投票日前の11月2日にデモイン・レジスターがハリス氏が優位とする世論調査を発表したことについて、実勢とかけ離れた内容でアイオワ州法の「消費者詐欺法」違反に当たると主張した。
ガネットの広報担当者は声明で「報道した内容を支持し、(言論・出版の自由を定めた)憲法修正第1条に基づく我々の権利を守るため、法廷で戦う」と述べた。
トランプ氏はこれまでも、報道機関に対して多数の訴えを起こしている。10月にはハリス氏のインタビュー番組の編集を巡り米TV大手CBSを提訴した。また同月、米紙ワシントン・ポストのハリス氏の選挙広告掲載について、連邦選挙委員会に苦情書を送った。
これまでのところ、実際に同氏の主張が裁判で認められた例は限られるようだ。だが今月14日にディズニーは、トランプ氏が傘下ABCニュースの司会者の発言を「名誉毀損」として起こした訴えで、同氏に1500万ドル(約23億円)を支払うことで和解した。
トランプ氏は今後も「偏った報道」をするメディアの提訴を続けると公言している。業界大手が同氏との対立を避ける道を選んだこことで、さらに訴訟攻撃の勢いは増しそうだ。
アイオワ大学法学部のサマンサ・バルバス教授は「トランプ氏は以前から、同氏に批判的なメディアを『罰する』と公言してきた。直近の訴えも、法廷で勝つことより脅し目的だ。地方紙に限らず大手も多くが資金難や経営問題に直面する。莫大な訴訟費用の負担は深刻な懸念であり、報道内容の自主規制を招きかねない」と影響を分析した。
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