ネタニヤフ首相はラファ侵攻計画を取り下げていない=ロイター

【カイロ=岐部秀光】イスラエルのメディアによるとイスラエル軍は6日、パレスチナ自治区ガザ最南端のラファ東部の住民らの避難誘導を開始した。ラファへの侵攻を準備している可能性がある。

住民らはアルマワシやハンユニスなどの避難ゾーンに移動するよう求められた。ラファで活動する国際援助機関の職員らに対しても避難の指示があった。

ラファはガザ北部などから戦闘を逃れた人々であふれ、深刻な人道危機が伝えられている。米国など国際社会はイスラエルに対しラファ侵攻で自制を呼びかけてきた。

イスラエル軍は5日、ラファからのハマスによるケレムシャローム検問所へのロケット攻撃でイスラエル兵3人が死亡したと発表した。イスラエル軍は攻撃を受け、人道物資の搬入路でもある同検問所を閉鎖した。

イスラエル軍はラファにあるハマスの拠点に複数の空爆を実施した。AFP通信によると一連の攻撃で少なくとも16人が死亡した。

ガザのイスラム組織ハマスの代表団は5日、休戦交渉の仲介国のエジプトを出国した。いったん前進もみられた交渉がふたたび膠着する懸念が強まった。ハマスは5日の声明で「完全な停戦」を要求する原則論に戻った。

イスラエルのネタニヤフ首相は「イスラエルが(合意に向けた)意思を示したにもかかわらずハマスはガザからイスラエル軍を完全撤退させ権力を持ち続けようという極端な立場を崩さなかった」と批判した。

これに対しハマス最高指導者のハニヤ氏は声明で、ネタニヤフ氏が「侵略を続け衝突の連鎖を拡大し、仲裁者の努力を台無しにしている」と反論した。

米中央情報局(CIA)のバーンズ長官もエジプトを出国し、もうひとつの仲介国であるカタールに向かった。6日にはイスラエルを訪れる予定だ。

イスラエル代表団は5日にエジプトを訪れる予定だった。イスラエル紙ハーレツによると、ハマスの強硬な対応をみて訪問を見送ったもようだ。

イスラエルはハマスの時間稼ぎ戦略には応じないと強調してきた。休戦をめぐる交渉が暗礁に乗り上げれば、イスラエル軍がガザ最南端のラファへの侵攻計画を実行に移す可能性が高まる。すでに危機的なガザの人道状況をさらに深刻にするおそれがある。

テルアビブやエルサレムなどイスラエルの主要都市では5日夜、交渉による人質の奪還を求めるデモが発生した。デモ参加者は政府の対応を批判し、前倒し総選挙の実施を要求した。

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