【北京=石井宏樹】パリを訪れている中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席は6日、マクロン仏大統領と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長と会談した。中国から大量の電気自動車(EV)などが流入するとのEUの懸念に対し、習氏は「中国の過剰生産問題は存在しない」と反発。EU側との溝が改めて鮮明になった。

中国の習近平国家主席=2019年撮影

 EU側は、中国が不動産不況による景気低迷挽回のために安価なEVや鉄鋼を大量に生産し、EUに余剰製品を輸出して域内企業や雇用に打撃を与えると警戒している。中国政府によるEV業界への補助金調査を始めるなど、不均衡な競争環境の是正に動いている。  ロイター通信によると、会談でフォンデアライエン氏はマクロン氏とともに、中国側に公平な貿易環境の実現を求めた。会談後、フォンデアライエン氏は記者団に「EUは中国工業製品の過剰生産を吸収することはできない」と中国をけん制。「自国市場を守るために必要な厳しい判断を下すことに揺るぎはない」と対抗措置の可能性にも言及した。欧州に加え米国も中国の過剰生産に対する警戒を強めている  国営通信新華社によると、習氏は会談で、過剰生産を否定した上で「双方が対話と協議を通じて貿易摩擦を適切に処理し、双方の合理的な懸念に対応すべきだ」と述べた。

◆現地生産を進め、懸念払拭を図る

 中国企業はフランス内でEV向け電池工場を建設。フランスの後に訪問するハンガリーでも、中国EV最大手の比亜迪(BYD)が欧州初のEV組立工場建設を予定している。米国との緊張緩和が進まない中、中国は現地生産を進め、欧米側の懸念払拭を図ろうとしている。  習氏とマクロン氏は同日、二国間の首脳会談も行い、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢について意見を交わした。中国外務省によると、今年7月に開幕するパリ五輪の大会期間中、フランスとともに全世界での停戦を呼び掛ける共同声明を発表した。   ◇

◆中仏首脳がラファ侵攻に反対する共同声明を発表

 【北京=石井宏樹】中国の習近平国家主席とフランスのマクロン大統領は6日、パリでの会談後に中東情勢を巡る共同声明を発表し、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ最南部ラファの地上侵攻に反対すると表明した。中国外務省が明らかにした。  声明では、国際人道法に基づいてガザ地区の民間人を保護する必要性を再確認。「ラファ侵攻はさらに大規模な人道的災害を引き起こす」と指摘した。「パレスチナ民間人の強制移住にも反対する」とも強調。持続可能な停戦やガザ地区での大規模な人道支援の確保、民間人保護を最優先課題に挙げた。  両首脳は中東情勢のほか、人工知能(AI)や生物多様性、農業交流に関する共同声明も発表。環境や航空、農業食品などの分野で約20項目の協力文書に署名した。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。