米紙ニューヨーク・タイムズの本社=ロイター

【ニューヨーク=清水石珠実】米新聞大手ニューヨーク・タイムズ(NYT)は8日、2024年1〜3月期の純利益が前年同期と比べて81%増え、4041万ドル(約62億円)になったと発表した。売上高は6%増の5億9401万ドルだった。電子版とパズルゲームなどを組み合わせた「パッケージ販売」による購読者増が増収増益につながった。

1株当たり利益(EPS)は0.24ドル(前年同期は0.13ドル)で市場予想(0.20ドル程度)を上回った。特殊要因を除いたEPSは0.31ドルだった。

3月末時点での総有料読者数は1055万人。うち991万人が電子版やパズルなどの「デジタル読者」だった。1〜3月の3カ月間で21万人の純増となった。NYTは「27年末時点で総有料読者1500万人の獲得」を経営目標に掲げる。

メレディス・コピット・レビアン最高経営責任者(CEO)は、8日に開いた決算説明会で「(好業績は)世界で起きていることを理解したいと考える、好奇心が強い人たちにとって必要不可欠な媒体になるという戦略が正しいことを示した」と語った。

売上高の内訳をみると、購読料収入が8%増加した一方で、広告収入は2%減った。デジタル広告に関する収入は3%増えたが、紙の新聞向けが約10%減った。世界的な景気の先行き不安をうけ、広告収入には逆風が吹いている。

NYTは、ニュース報道を中心とした電子版の購読者に対して「バンドル」と呼ばれるパッケージ購読に移行するよう促している。パッケージ購読すると、クロスワードのようなゲームやレシピなども読めるようになる。22年には、スポーツ情報専門サイト「ジ・アスレチック」、単語当てゲーム「Wordle(ワードル)」を相次ぎ買収した。バンドルの内容強化に力を入れている。

戦略が奏功し、デジタル読者1人あたりの売上高は約2%増加した。購読者全体における組み合わせ購読比率はすでに43%に達し、25年末には5割を超える見通しという。

23年12月、NYTは人工知能(AI)を手がける米オープンAIと同社に出資する米マイクロソフトを著作権侵害の疑いがあるとして提訴した。訴訟関連費用として1〜3月期に100万ドルを計上した。

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