9日午後4時から赤の広場で式典

ロシアで5月9日の「戦勝記念日」は、第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利したことを祝う、最も重要な祝日の1つで、各地で記念式典や軍事パレードが行われます。

首都モスクワでは、日本時間の9日午後4時から中心部の赤の広場で式典が開かれ、7日に通算で5期目の任期をスタートさせたばかりのプーチン大統領が演説する予定です。

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから3年目に入るなか、プーチン大統領は、軍事侵攻をナチス・ドイツに勝利した先の大戦と重ね、国民に改めて結束を呼びかけるものとみられます。

また演説の後には、軍事パレードが行われ、ショイグ国防相によりますと、70以上の兵器や9000人以上の兵士が参加する予定です。

これを前に、プーチン大統領は8日、旧ソビエト各国の首脳を招いて、ロシアが主導する「ユーラシア経済同盟」の会議を開きました。

会議に出席した首脳の多くは、戦勝記念日の式典にも出席すると伝えられ、軍事侵攻で欧米との対立が深まる中、友好国との連携をアピールするとみられます。

「不滅の連隊」各国で

ロシアの戦勝記念日にあわせて、東京のロシア大使館では6日、外交官や国内各地に住むロシア人などが参加し、家族や親族の遺影を掲げて行進する催し「不滅の連隊」が行われました。

国営ロシア通信によりますと、参加者は300人あまりで、ノズドレフ大使があいさつで「われわれの責務は、ナチズムを粉砕し用心するよう言い残した人々の記憶を守り、世界大戦の惨禍を繰り返さないよう全力を尽くすことだ」などと述べたということです。

また大使館によりますと、今回の催しには、中国の呉江浩駐日大使が初めて参加したということで、ノズドレフ大使と並んで行進する映像も公開し、両国の接近を印象づけています。

ロシア外務省は、「不滅の連隊」の催しは、ことし、アメリカやスペイン、ベトナムなど10か国以上で行われ、あわせて数千人が参加したとしているほか、中国・北京でも9日ロシア大使館で行われる予定だと発表しています。

ロシア側としては、外国に住むロシア国民などとの結束をアピールするねらいもあるとみられます。

ロシアにとって5月9日は

ロシアで、5月9日は、第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」で、最も重要な祝日の1つです。

ナチス・ドイツとの戦いは、ロシアでは「大祖国戦争」と呼ばれ、旧ソビエトでは2600万人以上の兵士と市民が死亡したとされ、苦難の末に祖国を防衛し、勝利した、栄光と誇りの日と位置づけられています。

例年、この日には、各地で記念式典などが行われ、特に、首都モスクワ中心部の「赤の広場」で開かれる式典では大統領による演説のほか、大規模な軍事パレードが行われてきました。

このうち60周年の節目の2005年の式典には、当時の小泉総理大臣や、アメリカのブッシュ大統領、ドイツのシュレーダー首相など50以上の国や国際機関の代表が出席し、戦勝国・敗戦国がともに大戦の犠牲者を追悼し、「追悼と和解」を演出する側面もありました。

プーチン政権では国威発揚の場に

プーチン政権は近年、この戦勝記念日を国威発揚の場として利用し、軍事パレードでは、最新のミサイルや戦車などを披露し、ロシアの軍事力を内外にアピールしてきました。

2012年からは、戦勝記念日に合わせて、大戦で戦った家族や親族の遺影を掲げて市民が行進する催し「不滅の連隊」が各地で行われ、プーチン大統領みずからも市民とともに参加するなど、政権側は愛国心を高めて国民の結束をアピールするイベントとして利用してきました。

プーチン政権は、おととし、ウクライナへの軍事侵攻を始めてからは、ウクライナのゼレンスキー政権を一方的にナチスに重ね、ロシアを守るためにネオナチと戦っているとして軍事侵攻を正当化する主張を繰り返してきました。

去年の戦勝記念日の演説では、プーチン大統領は「われわれの祖国に対して再び『本当の戦争』が行われている」などと述べ、ロシアは欧米などとの戦争が始まったと主張しています。

一方、軍事侵攻の影響もあり、去年の軍事パレードは例年よりも規模が縮小され、参加した戦車は1両だけで、「不滅の連隊」も中止となりました。

またウクライナでは、戦勝記念日について、かつては同じ旧ソビエトのロシアと同様に9日に祝われてきましたが、ロシアによる軍事侵攻後の去年、ヨーロッパ各国などと足並みをそろえ、8日に記念日を変更する法改正を行い、ロシアと決別する姿勢を鮮明にしています。

ウクライナ隣接地区ではパレード中止

ロシア国営のタス通信によりますと、9日の戦勝記念日に行われる軍事パレードは28の都市で実施されるということです。

ただ、ウクライナに隣接する西部クルスク州やブリャンスク州などのほか、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミアでは軍事パレードの中止が決まっています。

中止の理由について、地元の知事などは「安全を最優先するため」としていて、こうした地域では、ロシア側の施設への攻撃も続いていることから警戒を強めているものとみられます。

また、2012年以降、戦勝記念日にあわせて行われてきた、市民が第2次世界大戦で戦った家族や親族の遺影を掲げて行進する催し「不滅の連隊」についても、安全上の懸念を理由に全国的に2年連続で中止となり、オンラインなどのイベントに変更されています。

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