パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍の攻撃による犠牲者が3万5千人を超えた。同軍は最南部ラファで攻撃を強めているほか、北部でも地上作戦を始め、民間人のさらなる犠牲が懸念される中、米国やエジプトなど国際社会から強い批判が出ている。

 「イスラエルは国際人道法に即した行動をとっていない」。ブリンケン米国務長官は12日、米CBSやNBCの報道番組に相次いで出演し、そう批判した。軍事作戦を拡大するイスラエルに対し、バイデン政権で「最も強いレベルの批判」(AP通信)だった。

 いまの作戦を続ければ、「罪のない民間人の恐ろしい犠牲」が出ると指摘し、イスラム組織ハマスの壊滅も困難だ、と付け加えた。

ラファから36万人が避難

 米紙ワシントン・ポストは11日、バイデン政権がイスラエルに対し、イスラエルがラファへの本格侵攻を自制することを条件に、ハマス指導者の正確な居場所を突き止め、隠れ家となっている地下トンネルを見つけるのに役立つ機密情報などを提供することを提案した、と報じた。

 イスラエル軍は7日にエジプトとの境界にあるラファ検問所を占拠し、地上部隊が限定的な地上作戦を開始。ラファでの攻撃を強めており、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は13日、過去1週間で約36万人がラファから避難したと発表した。軍はさらに北部ジャバリヤなどでも地上作戦を始めた。

 戦闘休止や人質解放の交渉も中断し、仲介役を担ったエジプトも激しく反発している。エジプト政府は12日、南アフリカが昨年末にガザでのイスラエルの軍事作戦の停止などを求めて国際司法裁判所(ICJ)に起こした訴訟に参加する意向を表明した。

 エジプト政府は声明で「ガザのパレスチナ市民に対するイスラエルの攻撃が深刻化し、範囲も広がっている。ガザに住むことができない前例のない人道危機を生み出している」と説明した。国連安全保障理事会などに対し、ラファでの軍事作戦の停止の必要性を訴えた。(エルサレム=今泉奏、カイロ=其山史晃)

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