【ニューヨーク=三島大地、ロンドン=大西康平】15日の株式市場で米欧の主要株価指数が相次ぎ最高値を更新した。同日発表の4月の米消費者物価指数(CPI)でインフレの鈍化が確認され、米経済の軟着陸期待が高まった。欧州も景気の底入れ観測が強まる。米欧で早期の利下げ期待が増し、株式市場の楽観論につながっている。

米労働省が15日発表した4月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比の上昇率が3.4%と3カ月ぶりに伸び率が鈍化した。航空運賃や宿泊費など、このところ高止まりしていた指標が前月比で軒並み下落した。「インフレが緩和しているとの確信を得たい米連邦準備理事会(FRB)にとって歓迎すべき展開だ」(シティグループのベロニカ・クラーク氏)。

インフレの鈍化を受けて、FRBの早期利下げ観測が勢いを増している。米金利先物市場は9月までの利下げ転換を7割の確率で織り込む。年内に2回の利下げに踏み切るとの見方も約7割に上る。金融政策の動向に敏感な2年物国債利回りは一時4.71%と、4月上旬以来の低水準を付けた。

米株式相場はリスクオンの様相を強めている。15日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は前日比0.9%高の3万9908ドルと、約2カ月ぶりに最高値を更新した。S&P500種株価指数やナスダック総合株価指数も史上最高値を更新した。

金利の低下で割高感が薄れたとして、エヌビディアは3.6%上昇。主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)も前日比2.9%高となった。

同日公表の4月の米小売売上高(速報値、季節調整済み)は前月比横ばいとなり、市場予想(0.4%増)を下回った。4月の雇用統計が予想を下振れるなど、底堅さを保っていた米経済にも減速の兆しが出ているが、むしろ市場では「軟着陸シナリオを裏付ける」(UBSウェルス・マネジメントのブライアン・ローズ氏)との見方が有力だ。

欧州でも主要600社で構成する欧ストックス600が前日比3.06(0.6%)高の524.71となるなど、連日で過去最高値を更新した。英FTSE100や独DAX指数、仏CAC40もそろって最高値で引けた。

欧州委員会が同日に公表した春の経済見通しでは、ユーロ圏の24年の物価上昇率は2.5%と、前回2月から0.2ポイント下がった。欧州中央銀行(ECB)が目標として掲げる2%に近い水準となり、6月の利下げ開始がメインシナリオとなっている。

イングランド銀行(BOE)もベイリー総裁が9日の記者会見で今後の利下げを示唆し、6月利下げの公算が大きくなった。欧州も米国同様、インフレ抑制による利下げ期待が株価を後押しする構図だ。

もっとも、市場の思惑通り中銀が動くかは不透明だ。特に米国では年明け以降、インフレの粘着性を示す経済統計が出るたび、市場の利下げ開始時期の見通しは後退を繰り返してきた。

「(インフレの鈍化は)正しい方向への一歩ではあるが、あくまで経済統計のひとつに過ぎない」(バンク・オブ・アメリカ)。FRBが重視する「家賃を除くコアサービス価格」、通称「スーパーコア」の上昇率も依然高止まりする。

FRBのパウエル議長も14日のイベントで「忍耐強く、引き締め的な政策がその役割を果たすのを待つ必要がある」と述べ、早期利下げに慎重なスタンスを崩さないでいる。ウェルズ・ファーゴ証券のサム・ブラード氏は9月の利下げ開始をベースケースとしながらも、「FRBが利下げに踏み切ると確信するのは早すぎる」と警戒心をにじませる。

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