女性がクマに襲われたとみられる住宅(奥)の周辺を巡回する富山県警のパトカー=富山市江本で2023年10月18日午前10時56分、萱原健一撮影

 クマによる人身被害多発を受け、環境省は23日、鳥獣保護法で禁止している市街地での銃猟使用を人身被害の恐れがある場合に特例的に認める方針案を有識者検討会に提示した。パブリックコメント(意見公募)を経て正式決定し、同法改正案の国会への早期提出を目指す。

 現行の鳥獣保護法では、住宅が集合する地域や公共施設周辺などでの猟銃の使用を原則禁じている。このため、市街地で被害が発生しそうなときでも、猟銃が使用できるのは警察官が警察官職務執行法に基づいてハンターに命じた場合などに限られていた。

 環境省が示した方針案によると、住宅が集合している地域にクマが出没した場合、人間に被害が及ぶ恐れがあったり、建物内にクマが入り込んだりした場合に、警察官に命じられなくても猟銃を使えるようにする。また、住宅地で箱わなで捕獲した場合、その場での猟銃による殺処分も認める。

 この日の検討会では、方針案について委員から特に反対意見は出なかった。

 2023年度のクマによる人身被害は全国で198件、人数は219人に上り、統計のある06年度以降で最悪となった。クマの出没現場では多くの場合、警察官が駆けつけるが、クマに関する専門的な知識や経験が不足していることなどから、警察官がハンターに猟銃使用を命じるまで時間がかかるケースが少なくない。実際にハンターや自治体職員に危険が及ぶ事例があるという声が現場から出ていた。【山口智】

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