死神うどんカフェ1号店。ある日、私の目はこんな奇抜な文字の羅列に惹きつけられた。
「高校では、友だちは作らない」。高校1年の希子は中学生の頃、水難事故に遭い、助けにきた同級生の男子、亜吉良(あきら)のおかげで命を救われる。だが亜吉良は意識不明のまま眠り続け、希子は自分だけ助かったことに罪悪感を抱いて心を閉ざし、明るい高校生活を諦めていた。
そんな希子が気まぐれに立ち寄った店の名が「死神うどんカフェ1号店」。かまたまうどんとカフェオレしかないその店は「元死神」の九嵐(くらん)という店長と、現役の死神2人の、見た目は若い男子たちがやりくりしていた。
そこへもう一人の店員、眠り続けていたはずの亜吉良が現れる。九嵐の力で半分生き返った「半死人」として。さらに、なぜかペンギンの姿でよみがえった元人間の男子、月太朗。明るい面々と不思議な出来事に巻き込まれながら希子の考えや気持ちは次第に変わっていく。
「死神うどんカフェ1号店」はシリーズものの小説だが一見ありそうな物語に思え、疑問を私にもたらした。それはトラウマをもつ希子の心情だ。死神たちは人間界におりてきて人間の姿を借りて働いている。本来は寿命の尽きた人間を連れていく役目だろう。
一方の希子は命ある普通の女子だが心の命、つまり精神が死んでいた。毎日同じことを繰り返し、誰とも話さず感情を表に出さない。それで生きていると言えるだろうか。
こんなことを真剣に考える中学生が私の周囲にいるのかとも思いつつ、答えを見つけようと読み進んだ。
やがてつながりの大切さに気づく希子。死神たちも悩める若者だった。ささやかだが世界の見方が変わる本かもしれない。
東京都調布市 森谷優俐(14)
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