4月にスイス・ジュネーブで開催された世界最大の高級腕時計展示会ウォッチズ&ワンダーズ(WW)では、女性用やユニセックスの新作も多数発表された。

 長年、機構の複雑さや機能性を前面に出すことが多かった男性用腕時計の分野でも、近年は宝飾ブランドによる高いデザイン性や外装の美しさが評価されるようになった。そうした意味では、女性用腕時計のクリエーションは時計業界全体に影響を与えている。

ヴァンクリーフ&アーペル

ヴァンクリーフ&アーペルのレディ ジュール ニュイ ウォッチ。直径33ミリ、1478万4千円

 ヴァンクリーフ&アーペルのレディ ジュール ニュイ ウォッチ(1478万4千円)はダイヤモンドの月とイエローゴールドの太陽が配置されたディスクが24時間で1回転して昼夜を示す。地表を模した部分と太陽に施された細かい彫刻は「ギヨシェ」と称される技術で、高級腕時計に多数みられる手法だが、ひときわ美しかった。ダイヤモンドが配置されたホワイトゴールドのケースは33ミリで、自動巻きの機械式ムーブメントを搭載する。レディ アーペル ブリーズ デテ ウォッチ(2877万6千円)には、エナメルペインティングの職人技を駆使して描かれた草花やチョウが動きだす。自動巻きで、ケースは38ミリのホワイトゴールド製だ。

ヴァンクリーフ&アーペルのレディ アーペル ブリーズ デテ。自動巻きで38ミリのホワイトゴールドケース。2877万6千円

カルティエ

 カルティエのリフレクション ドゥ カルティエ(590万400円)は一見するとゴージャスなブレスレット。先端に小さな時計が据えられており、反対側の磨き上げられた面にも名前のとおり時計が映り込む。イエローゴールド製のほかピンクゴールドと、ホワイトゴールドで宝石をセッティングした更なる高級版も発表された。言わずと知れた高級ジュエラーであり、ヒョウなどの動物をモチーフとした作品が人気のカルティエ。動物から着想を得たアニマル ジュエリー ウォッチ(1782万4千円)の新作も発表された。70年代に同社が発表したイエローゴールド製の名作時計ペブルを連想させるケースとダイヤルの配置で、ダイヤモンドなどがビッシリとセットされている。

リフレクション・ドゥ・カルティエ
カルティエのアニマル ジュエリー ウォッチ。クォーツムーブメントのホワイトゴールドケース。1782万4千円

シャネル

 創業者ガブリエル・シャネルの手仕事を着想源にしたシャネルは人気のJ12シリーズで、手巻きの機械式で文字盤にあしらったマドモワゼルとトルソーが動きだす38ミリケースのJ12 クチュール ワークショップ オートマタ キャリバー6(100本限定、3872万円)を発表。なお、小ぶりな33ミリのケースでクオーツムーブメントのJ12 クチュール(118万2500円)の時針と分針は裁縫ハサミを、秒針は裁縫針をモチーフにした。

シャネルのJ12 クチュール ワークショップ オートマタ キャリバー6は38ミリケースでベゼルにはバゲットカットのダイヤモンドが。8時位置のボタンでマドモワゼルとトルソーが動き出す。3872万円。
シャネルのJ12 クチュールでは33ミリケースのクォーツムーブメントも。裁縫ハサミの時分針、裁縫針の秒針と、それぞれのモチーフが今年のテーマを反映している。118万2500円

ショパール

 ショパールはダイヤルと風防の間をダイヤモンドがゆらゆらと動くアイコンウォッチのハッピースポーツに、自動巻き機構でグリーンエナメルをダイヤルの新作(250本限定、249万7千円)を加えた。ケースは同社独自の再生スチールを使用した素材だ。

ショパールの定番ハッピースポーツの新作自動巻きモデル。ダイヤモンドが多数セッティングされている。249万7千円

フランク・ミュラー

 機構の見せ方とエレガンスの両立が際立っていたのはフランク・ミュラーのヴァンガード レディ スケルトン(1375万円)。縦42・3ミリ、横32ミリのピンクゴールド製ケースから見える手巻きのムーブメントには貴石が曲線に合わせて丁寧にセッティングされている。

フランク・ミュラーのヴァンガード レディ スケルトン。1375万円

エルメス

 実用性とデザインを兼ね備えた新作の中で、今年を代表する時計の一つになりそうなのがエルメスのカット(102万4100円)だ。全く新しいデザインで、柔らかい印象のケースの形状、親しみやすいインデックスのフォントと針の形状、リューズをダイヤルの1時位置と2時位置の間に配置したことで飽きのこないスッキリとしたイメージを打ち出せたのではないか。38ミリのケース幅は性別を問わず親しまれそう。ベゼルにダイヤモンドをセッティングしたものやゴールドとステンレスのコンビモデル、8色展開のラバーストラップなどバリエーションも豊富だ。

エルメスの新作時計「カット」は1時位置と2時位置の間のリューズが特徴的。様々なバリエーションがあり、ステンレスのシンプルなモデルは102万4100円

ウブロ

 ウブロはケースとブレスレットで同じ素材を使ったビッグ・バン インテグレーテッド タイムオンリー ブルーセラミック(210万1千円)がシンプルかつ心に残った。ケース幅は38ミリ。ブランド側から性別の指定はなかったが、PR用の公式写真では女性モデルが着用していた。清らかなイメージかつ男女兼用で使えそう。WWの期間中はジュネーブのブティックでも、この時計がショーウィンドーにされるなど、大ぶりな時計で名をはせたブランドの新たな局面を感じさせる時計だ。

ウブロのビッグ・バン インテグレーテッド タイムオンリー ブルーセラミック。210万1千円

グランドセイコー

 機能性はアジア唯一のWW参加ブランド、グランドセイコーの代名詞だ。新作のSBGH341(101万2千円)は自動巻きで精度の高い毎秒10振動の機械式ムーブメントを搭載し、38ミリのケースとブレスレットは傷つきにくく、通常よりも白いブライトチタン製。ダイヤルの色は同社の機械式ムーブメント製造工房がある岩手県雫石町でみられる、桜の花を雪が覆い隠す景色を表現した。(編集委員・後藤洋平)

グランドセイコーのSBGH341は実用性を重視した機械式の自動巻きモデル。101万2千円

◇写真はブランド提供。価格は予定を含む

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。