アニメ映画「千と千尋の神隠し」の「湯婆婆」と「銭婆」のおみくじコーナーは撮影スポットとして人気を集めている=神奈川県横須賀市

「となりのトトロ」などのアニメ映画で知られるスタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫さんの歩みを紹介する「鈴木敏夫とジブリ展」が横須賀美術館(神奈川県横須賀市鴨居)で開催され、人気を博している。手書きの企画書などの貴重な資料が展示され、「紅の豚」で主題歌などを担当した歌手の加藤登紀子さんも来場して制作時の裏話を披露し盛り上げた。来場者数は4万人を超え、同館の令和5年度の来場者数が16万2022人と歴代2位の記録となったことにも貢献した。

鈴木さんは高畑勲、宮崎駿両監督とともに数々の名作を世に送り出し、日本のアニメを世界の芸術にまで高めた。同展では、名古屋市で過ごした幼少期の自室を再現した展示や学生運動に身を投じた大学生活の記録などを紹介。手書きの企画書などの貴重な資料や約8800冊の蔵書と約1万本の映画コレクションなども再現されている。

アニメ雑誌の編集に携わる傍らで、映画制作を始め、スタジオジブリの設立につながっていく鈴木氏の半生をたどる展示となっている。

加藤さんは12日に同館を訪問。「紅の豚」で声の出演と、主題歌とエンディングテーマを担当し、仮の音源として録音した歌がそのまま映画で採用されたことなど当時の裏話を披露した。「飛ばねえ豚はただの豚だ」という名ぜりふに「ばか」と返す人気の場面は36回もやり直したといい、「映画に参加したことで歌手としての在り方が大きく変わった。戦争を経験した(主人公の)ポルコの悩みが今の時代とシンクロする」と話した。

第96回アカデミー賞で宮崎監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞に選ばれたことも同展の追い風となっている。11日現在で同展の来場者数は4万3747人となったという。加藤さんは「戦争がきっかけで(好きな)飛行機の開発が進むという宮崎さんが抱えていた矛盾をテーマにした作品だと感じる」と称賛した。

横須賀美術館での開催は6月18日まで。(高木克聡)

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