名古屋芸術大側の回答を受け、記者会見で大学の対応を批判する学生側代理人の田巻紘子弁護士=名古屋市中区で2024年4月16日午後3時3分、川瀬慎一朗撮影

 名古屋芸術大(愛知県北名古屋市)の来住尚彦学長(63)からセクハラを受けたと複数の女子学生が訴えている問題で、学生らは16日に記者会見を開き、調査委員会がまとめた調査報告書の開示を大学が拒否したことを明らかにした。その上で「いまだに大学側から何の説明もない」と訴えた。

 問題は3月28日に報道され明らかになった。大学側は運営法人の理事をトップに外部の弁護士2人を加えた調査委を設置して調べていたが、報道を受ける形で同日夜に「処分するべきハラスメントが行われたとは認定できない」との結論をホームページで公表した。

 一方で被害を訴えた学生側は、大学からの説明が一切ないとして、代理人弁護士が調査委の調査報告書の開示や結論に至った経緯の説明などを求めていた。さらに文部科学省も「しっかり説明責任を果たすべき」と大学の対応を注視する姿勢を見せていた。

 学生側の会見によると、大学は調査報告書について「元々開示を予定していないもの」とし、学生の修学環境の改善策は「努力するが具体的に答えられない」と回答したという。

 学生側代理人の田巻紘子弁護士は会見で「大学側から説明の申し出がなく、不誠実極まりない。ハラスメントにきちんと対応する気がないのか」と批判。学生の一人も「調査委から受けたヒアリングがどう扱われたのか分からない。報告書の開示が一番で、謝罪や説明もそこからだ」と訴えた。学生らは今後大学側に対し、結論への異議▽説明の要求▽第三者による再調査の実施――などを文書で申し入れる方針。

 毎日新聞のこれまでの取材で、調査報告書は来住氏の学生への一部行為を「セクハラに該当し得る」と指摘しつつ、「悪質性は高くなく、重い処分は相当ではない」と評価する内容だった。同大の広報担当者は取材に「ホームページで公開している内容が全て。学生への説明についてはプライバシーに関わることなのでお答えできない」と話した。

 学生らによると、昨年8月に学内でミュージカルの稽古(けいこ)中、複数の学生が来住氏から指導として頭をなでられたり、肩を組まれたりなどしたという。【川瀬慎一朗】

情報公開に詳しい新海聡弁護士の話

 再発防止を前提とするならば、事実を明確にすることからスタートするものだ。大学側の対応は再発防止に前向きとは到底言えない。被害を受けた人に情報がオープンにされなければハラスメントがなかったものとなり、助長することになる。なぜその結論に達したのかを被害者に説明した上で問題があればさらに追及し、追加調査しなければならない。修学環境改善への回答も、「努力します」では何もしないのと同じで、安心して通学できない。教育機関であるならば、こうした問題の際のガバナンスを整えておくべきだ。

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