ラッコのリロとパフォーマンスを披露する飼育員の福永芳樹さん=福岡市東区のマリンワールド海の中道で2024年3月18日午後2時32分、松本光央

 福岡市東区の水族館「マリンワールド海の中道」のラッコプール。飼育員の福永芳樹さん(29)は大好きなイカをほおばるリロに表情を緩めながらも、食べ方や泳ぎ方、毛並みなどに目を凝らした。「いつもより何か違うなとなれば異変を伝えるサインかもしれない。長生きしてほしいから」と話す。

 リロを担当するのは、同館の海洋動物課の6人だ。6人はリロの他、ペンギン、アシカも担当する「アシカチーム」のメンバー。リロが3月30日で17歳になったのに合わせて、6人のリロファミリーを紹介する企画の5回目。

 鹿児島出身で、地元の水族館に行く時はオープンから入り浸っていた。イルカのトレーナーになりたいと思い、マリンワールド海の中道の一員となったのが2017年。イルカやアザラシなどがいる「かいじゅうアイランド」で2年間飼育員をし、19年からアシカチームのメンバーとなった。

飼育員の福永芳樹さんの合図で来館者にあいさつするラッコのリロ=福岡市東区のマリンワールド海の中道で2024年3月18日午後2時半、松本光央撮影

 当時、ラッコはリロとパートナーのマナがいた。ラッコを実際に見た第一印象は率直に「かわいい」。ただ、イメージしていたより体が長くて大きいのに驚いた。仲良しの2頭と時間を重ねるうちにそれぞれの性格が見えてきて、リロが穏やかで優しい性格であることも分かってきた。

 動物と付き合う飼育員という仕事が楽しくてたまらないという。「イルカが好きでこの仕事を志したが、いろいろな動物を知るうちにどの動物も好きになった」と話す。勤務で館内を歩いていると、来館者から動物のことを聞かれることがあるという。「そんな時に生態などを説明して『へえ~』と驚かれるとうれしくなる。動物のことをたくさん知ってほしい」とほほ笑む。

 リロをはじめ動物と暮らす時間が「生活の一部」という福永さん。「17歳となればもう高齢だから、一日一日を健康に過ごしてほしい」。これからもリロとの時間を楽しみにしている。【松本光央】

ポーズを決めるラッコのリロを見てほほ笑む飼育員の福永芳樹さん=福岡市東区のマリンワールド海の中道で2024年3月18日午後2時31分、松本光央撮影

国内飼育のラッコは3頭のみ

 国内の水族館には1994年のピーク時に122頭のラッコが飼育されていたが、海外から輸入ができなくなり、国内繁殖も難しくなってきたため、現在は3頭まで減ってしまった。3頭は、鳥羽水族館(三重県鳥羽市)の19歳のメイと15歳のキラ、そして、マリンワールド海の中道のリロ。メイとキラはいずれも雌で、雄はリロだけだ。飼育下のラッコの寿命は20歳前後と言われている。3頭は飼育員やファンに囲まれて元気に暮らしている。

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