オスの蚊は同種のメスの羽音を聞き分けていることがわかったと、名古屋大のチームが2日発表した。オスは羽音を頼りにメスに近づくが、聞き分けによって異種交配を避けているとみられる。特定の種類のオスを音でおびき寄せ、繁殖を抑えるといった応用が期待できるという。
日本の在来種であるヒトスジシマカと、主に熱帯地域に生息するネッタイシマカは、どちらも「ヤブ蚊」と呼ばれ、さまざまな伝染病を媒介する。近年、この2種の生息地域は重なりつつあるが、異種交配をしない仕組みはよくわかっていなかった。
チームが両種のメスの羽音を録音して解析すると、羽の長さの違いから、周波数が30ヘルツほど異なっていた。次に、さまざまな高さの人工音をオスに聞かせて行動を調べると、同種のメスの羽音に近い周波数のときに、オスが最もスピーカーの周りに集まった。
音を使って蚊をわなに集める研究は既にあるが、実験室では成功しても野外では難しいのが現状という。チームの上川内(かみこうち)あづさ・名古屋大教授(神経科学)は「ネッタイシマカも今後日本に入ってくる可能性は十分ある。音を使って対策をする提案ができたので、今後は野外で捕虫できる装置作りを目指したい」と話した。
成果は6月14日付の米科学誌「アイサイエンス」に掲載(https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.110264)された。【藤沢美由紀】
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